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 「つづきはなあに?」 
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「つづきはなあに?」
3才の頃、僕の娘は、きまってそう聞きました。
みなさんはご存じでしょうか・・イソップの「欲張りな犬」のお話。

1匹の犬が肉をくわえて歩いています。
ふと川をのぞき込むと、そこには自分の姿が映っていました。
「おっ、あんな所に、俺と同じように肉をくわえた犬がいるぞ。
 よし、脅かしてあの肉もいただいてしまおう。」
そう考えた犬は川に向かって「ワン」とほえます。
あえなく自分の持っていた肉は口からはなれ、川へ落ちてしまうの
です。

そんなお話です。
その犬のお話をしてあげるたびに、娘は僕に聞くのです。
「おとうちゃん、つづきはなあに?」
「つづきはないよ。これでおしまいだよ。」
「じゃあ、犬はどうなるの?肉はもどってこないの?」
「うん。欲張りはいけないってことじゃないかなあ・・。」
「・・・・。」
こんな会話が何度も繰り返されるのです。

その頃の僕は、毎週の木曜日を娘に「本を読んであげる日」と決め
ていました。
たいていは寝る前の布団の中でのお話になっていました。
2,3のお話でおわりにしていたのですが、娘は気になるのか、た
びたび「欲張りな犬」の物語をリクエストしては
「つづきはなあに。」と聞いてくるのです。

次第に僕も気になりはじめ、こう聞きました。
「どうして、つづきがいるの?」
「だって、悲しいもん。」
「でも、犬はよくばりなんだから・・・。」
「でも、悲しいよ。おとうちゃんは悲しくていいの?」

僕は、はっとしました。
そしてなぜ今まで、その理由を聞かなかったのかと悔しくもなりま
した。

「そうか、悲しいまま終わっちゃうのがいやだったのか。」

「うん。悲しいまま終わっちゃうのがいやだった。
  おとうちゃん、つづきを話してよ。」

「よし、わかった。わかったぞ、ちび。
  うーん、川に肉を落としてしまった犬は・・・・・。」

僕はゆっくりとアドリブでお話の続きを考え、娘に話しました。

いや・・・、聞いてもらいました。
自分の娘になんとなく変ですが、そんな感じがしたんです。

これまでも、僕は、いやなこと、悲しいこと、つらいこと・・味わっ
てきました。
これからもきっとそんな体験をするのだと思います。

そんな時、僕は自分にこう聞こうと思います、あの時の娘のように・・・。
「つづきはなあに。」って。

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僕が作った「欲張りな犬」のお話の続き。
メルマガ【おはなし集「ぽとり」】で発信します。
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ではでは、また来週。



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