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【1】「人類初」
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今年、話題になった大接近。
あの「火星」・・・。
みなさんは見ましたか?

なんだか、ずいぶん、むかーしのことのように感じちゃいますが、
今年だったんですねえ・・。

僕の住む大分県には、宿泊して観測できる天文台があるんです。

そこに、家族で出かけましてね。
見ました見ました、天空ロマン。

天文台館長さんの解説付きで、いろんな事も教えてもらえたんです。

館長さんいわく・・。

「火星が赤く見えるでしょ。あれは鉄分を多く含んでいるからなの
 です。」

なるほど、たしかに火星の大地は赤茶色にくすんでいました。

「火星の南極はドライアイスでおおわれた極冠です。
 今、少しずつドライアイスが溶けてまして、だんだん小さくなっ
 て来てます。」

へえ・・。火星にも季節があるんだ・・。
なんか親近感を覚えるよ、火星くんっ!

「実は、大接近する8月より、9月の方が見やすいんです。
 見え始める時刻も早くなるんですよ。」

そういうものなのか・・・。

「時期によっては、火星の北極を見ることもできるんです。
 ちなみに火星は約2年ごとに小さな接近をくり返します。
 今回だけでなく、続けて観測してみてはいかがですか。」

ふーん。知らなかったなあ・・。

とまあ、こんな具合に「6万年ぶりの火星」を楽しみました。

で、思ったんです。

まてよ・・。6万年ぶり・・?

ってことは、前回の大接近はペキン原人のころだぞ。

じゃあ・・。

じゃあ、実は僕が見ている火星は、現生人類にとっては初の火星
大接近じゃないか。

そうだよ、6万年ぶりってより、「人類初の火星」なんだよな。

「人類初」と言う響きは、僕にとって、とても甘美でした。

そうだ・・。
僕はつづけて考えました。

そうだ、よく考えたら、僕という存在も現生人類が5万年かかって
生み出した、人類初の存在なんだ。

僕は、人類初か・・。
うーん、僕って、けっこう、すごいじゃんか。

ちょっと変だけど、そんなふうに考えたんです。
というか、考えついたんですね。

もちろん、僕だけじゃないですよ。

今を生きるすべての人間は、人類が5万年という気の遠くなるよう
な時間を費やし、その生存をかけて生み出した存在なのですよ。

生きてるってだけで、僕らは、人類初なんです。
あくびをしようと、鼻水たらそうと、人類初。
それは、よく考えると、きっと、すごいことなんですよ。

自分の生き方や行動について、僕はツメの先ほどの自信もありま
せん。

けど・・。

けれど、もっと根元的に考えれば、僕は存在するだけで、すごいん
です。

僕は決めました。

いやなことがあったら、考えよう。
僕は、人類初だぞって。

ではでは、また来週。



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