本物の土器を見たことがありますか?
そうです、あの弥生式とか縄文式なんていう土器です。
2000年以上も土の中に眠ってきた器です。
もちろん、そのままの形で出土することはほとんどありません。
割れたり、欠けたりした形で現代の僕たちの前に姿を見せてくれま
す。
で、考古学に携わる人々の手で、パズルのように組み上げられてい
き、博物館などに並ぶわけです。
その組立に使われる接着剤・・。
これ、実は、とても弱い接着剤なんです。
今や、ホームセンターなどで、僕らでも買えますよね、強力接着剤。
でも、手軽に入手できる強力接着剤は使わないんです。
土器の復元には、いわば、最弱の接着剤が使われるんです。
なぜだと思います?
結論から言うと、再度、壊れた時のためなんです。
今後もいろんな展示場に運ばれる土器たち。
運搬時や、設置時に、ひょっとすると壊れてしまうかも知れません。
なにせ、2000年前の土器ですもん、もろくなっているのは当た
り前です。
その時に、同じ部分が壊れるように、あえて、最弱を使うんです。
もし、強い接着剤で組み立てていたら、今度はどこが壊れるか予想
もつきません。
でも、そうっと、かあるく補修しておけば・・・。
変な言い方ですが、また、同じ所が壊れてくれます。
すると、もう一度、組み立てるときにうまくいくんです。
前と同じように組み立てればいいんですもん。
復元が簡単なんです。
振り返って・・・。
僕は、いろんなことで傷ついて生きてきました。
どうにも、弱いところがたくさんあって、それは嫌悪まではいかな
いけれど、正視したくない部分となって僕の中に存在してきたんで
す。
そして、できるだけ、その部分を改めようとしてきました。
もう、こんな思いはゴメンだな、もっと強くありたいなって・・。
いわば、つよおい、つよおい接着剤を探してきたんです。
僕、もう、やめます。
僕は、最弱の接着剤で、心を復元します。
また、そこが傷つけばいい。
また、そこが壊れればいい。
だって、そこは僕がよおく、よおく、ひょっとしたら1番よく知って
いる場所かもしれないんですから。
きっと何度でも組み立てることができる。
僕に必要な物・・・。
それは最弱の・・、
そう、最弱の心の接着剤なのです。
・・・。