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【0】ちょっと。
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久しぶりに、おすすめのテレビ番組のメールを頂きました。
「ピタゴラスイッチ」という番組です。
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幼児向けの番組だけど大人が見てもおもしろい。
科学の土壌を広げてくれそうな番組。
NHK教育。
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みなさんも、子どもと楽しめるオススメ番組教えて下さい。
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【1】今回の発信
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「浜やんの のほほん」
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浜やんは、旅回りの役者でした。

とぼけた感じの”のほほんとした脇役”でした。

舞台だけでなく、楽屋でも、宿屋でも、彼はのほほんとしていまし
た。

いつでもどこでも「浜やん」は「浜やん」だったのです。

一座の子ども達は、みんな浜やんが好きでした。

みんなと言っても小さな劇団ですから、たった5人の子どもです。

僕はその内の一人、小学2年生でした。

集めるわけでもないのに、浜やんの周りには、いつも子ども達がい
ました。

何をしてくれるわけでもありません。

ほんのりと酒に酔った顔をして、ぼうっとしているだけです。

その周りで、僕ら子ども達は遊ぶのです。

他の役者さん達は、たまに遊んでくれました。
トランプや将棋、時には手品も。
そんな時は、みんな浜やんをほうったらかしにします。

でも、何にもないときは、やはり浜やんです。

きびしい稽古とあわただしい旅の生活に追われる子どもたちにとっ
て、「のほほん」は とまり木の役割をしてくれたのです。

浜やん。
よく言われるような、”なくてはならぬ脇役”とはほど遠い感じで
した。

稽古の時も、のほほんとしています。

役がそんな役だからなのではありません。

座長も「ぼけ役」なのですが、真剣です。
真剣にぼけているのです。

それは、子どもの僕にもわかります。

でも、浜やんは違います。

座長との血縁関係で、なんとなく一座に入ってしまい、いつの間に
か役者をやってしまっていた浜やん。

およそ、真剣とは縁遠いのです。
少なくとも僕にはそう思えました。

彦根への巡業中のことです。

「座長、浜やんは?」

僕らが聞くと、座長は眉間にしわを寄せて言いました。

「浜やん? しらんな。」

愛想のない声は、いつもと違うような、同じような感じでした。

僕らは、浜やんの荷物に目をやりました。

釣り竿がありません。

「池だ。」

僕らは、宿屋の近くの池に急ぎました。

やっぱり。

浜やんの、のほほんとして釣り糸をたらす背中が見えました。

「浜やーん。」

僕らの声に、浜やんは振り返ろうとはしませんでした。

そして・・・。

1番先にかけよった進ちゃんの顔がこわばりました。

2番目のミイちゃんも。

みんな、みんな、言葉をなくしました。

浜やんが、泣いていたのです。

釣り竿の先を見つめながら、あの浜やんが・・。

僕の目に、座長の眉間のしわがフラッシュしました。

そして座長の無愛想な言葉を思い起こしました。

「浜やん。どしたのん?
 泣いてるのん?」

進ちゃんがそうっと聞きました。

浜やんは、こちらを見ずに答えてくれました。

「ああ・・。そうたい。
 今度の外題(げだい)、泣き役たい。
 だけん、ここで稽古しとったったい。
 どうね?
 おれ、上手かろ?」

そう言って、浜やんが笑いました。

はははって、力強く、そして悲しく笑いました。

ウソだよね。それってウソだよね。
僕らは、みんなそう思っていました。

でも。
みんなも悲しく、元気に笑いました。

僕は、大人がわからなくなりました。

笑っているみんなのことも、自分のこともわからなくなりました。

そして、たぶん、その時。

少し大人になったのだと思います。

子どもは、ある時、急に・・・。
少しだけど、とても急に、大人になるものかもしれません。

今でも、僕は・・。

悲しい時に思い出します。

のほほんとした浜やん。

釣り竿を抱えて帰る浜やんの影。

僕らの中で、その影だけが長かった。

その影を思い出します。

そして、比べるのです。

大人になった僕の影は、あの長さになっているのかなって。

ではでは、また次回。
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