入園してまもない子が、ほうきを見てこう言ったんだそうです。
「あっ。これ知ってる。」
「知ってる」と言われて、ちょっと、戸惑うセンセ。
その子は続けます。
「これね。一休さんが使ってる掃除機でしょ。」
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【1】今回の発信
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「ばあちゃんのホイッスル」
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「やいと」って知ってますか?
お灸のことなんです。
僕のばあちゃんは、自分で、も草をねり、つぼを見つけ、線香で火
をつけてお灸をしていました。
煙がこもんないように、縁側で。
僕たち孫は、その様子を目を皿のようにして見るんです。
うまいことお灸をこねましてね。
円すい型にしちゃうんです。指先ぐらいの大きさの富士山。
で、つぼに、もぎゅっとくっつけるんです。
そして、線香でそっと着火。
頂上から、じわじわと火が広がってくるんですね。
肌に向かって降りてくる。
見るからに熱そうなんです。
それも、一カ所ではありません。
片腕だけでも5,6カ所、お灸をすえるんです。
夏なんかだと、ばあちゃんの額に汗がにじんできます。
見ている僕達も、汗びっしょりになってるんです。
「ばあちゃん、なんで、やいとなんか すえるん?」
「ばあちゃん、熱くないんか?
やけど、しちょるやんか。」
僕らは、ばあちゃんに聞きます。
「そりゃあ、熱いさ。
けど肩こりなんかに、よう効くんや。
そうそう。
肩こりよりもっと効くもんがあるけど、何かわかるか?」
「わからん。」
ばあちゃんは、一呼吸置いて、ドスのきいた声で言います。
「お前達のお仕置きや。
もし言うこときかんでみい・・・。
やいと、すえるぞおっ!!」
「うひゃあ。」
僕達は逃げ出しました。
口やかましいばあちゃんでしてね。
しょっちゅう説教しては、
「やいと、すえるぞ。」と叱ってました。
年数が経ち、僕たちはわかってきました。
ばあちゃんが本気で孫にやいとをすえる気がないことを。
だって、誰もすえられたことがないんですから。
けれど、僕たちは、「やいとだ。」と言われれば、
「ごめん。ごめん。」と言って逃げました。
今、思えば。
あのセリフは試合終了のホイッスルだったのかもしれません。
きっと叱りながらも、孫を許す機会を探っていたんだと思うんです。
「やいと、すえるぞ。」は
「もう、いいよ。これから気をつけろよ。」と同義語だったんで
しょう。
そして、ばあちゃん自身に鳴らしていたホイッスルだった・・。
それを孫も肌で感じていた。
だから、「ごめん、ごめん。」で逃げていけたんでしょう。
僕は子どもを叱る時、雪だるま式になっちゃうことがあります。
特に、若手教員の時は、いばってました。
「反省の様子が見えんぞ。」
「手をぶらぶらさせながら聞いちゃだめだ。」
「ちゃんと、目を見て聞くんだ。」
最初に叱ってたことから、どんどん広がっていくんです。
ひどい時には、何日も前のことまで引っぱり出して叱ってしまいま
す。
ばあちゃんは「子育て教室」に行ったわけでもありません。
そんなマニュアル本すらもない時代です。
しかし、僕らは、ばあちゃんのいうことを「正しい」と思っていた。
言いつけを守らないことも多かったけれど、反抗はしなかった。
それは、「情」があったからだと思います。
「情」から生まれた無意識のテクニック、ばあちゃんのホイッスル。
孫の胸に、たしかに響いたのです。
30年以上すぎた今でも、その響きは変わりません。
・・・。
叱る時だけじゃなくって・・。
人生って、なんか引きずることってないですか?
イヤなことって、なかなか、ピリオドが打てません。
僕は、そうなんです。
だから・・。
せめて、せめて。
そっと、そっとホイッスル。
そおっとね。
ではでは。
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【2】メール頂きました。
皆さんから頂いたメールを紹介します。
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●こうして、いろんな方の想いを発信できるってことは、本当に
ありがたいです。
●僕自身は、メルマガの作者さんにメールを送るということが、
とても苦手です。
●だからこそ、ご協力に心から感謝しています。
本当にありがとうございました。
●なお、元になった、すべてのバックナンバーは下記にあります。
http://village.infoweb.ne.jp/%7efwkh8072/deko/8bu/
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【2−1】No28「魚と水泳」(忘れ得ぬって)について
「川下」さんから
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はいつさん、こんにちは。
川下と申します。小学校の教員をしています。
はいつさんのメルマガは、心温まる時間をくれます。
私も今回の思い出にあるような教師になりたいと思います。
子どもの心に残る教師になれたら教師冥利につきますね。
これからも、がんばってください。
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【2−2】No28「魚と水泳」(忘れ得ぬって)について
「JUNKO」さんから
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> それから、長い長い年月が過ぎました。
> 風の便りによると・・・。
> 森先生は、校長や教頭にならずに、先生のまま退職されたそうです。
> 口から先に生まれたヒデは、学校の先生になりました。
> だるま浮きができた孝太郎は、家業をついで魚屋のご主人になりま
> した。
> そして僕は、その夏のことをこうして書き残しています。
ここんとこ、好きです。
映画が終わって、エンドロールの時、こういう字幕が流れる。
そういうラストが好きです。
カメラが順に人を追って、最後、原稿用紙と手が写る。
そんなラストも素敵です。
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【2−3】No28「魚と水泳」(忘れ得ぬって)について
「みつね」さんから
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はいつさんへ。
初めてお便りします。
まぐまぐのオススメから購読しています。
新参者です。(笑)
はいつさんの「♪」は、エッセイという枠を超えた表現方法だ
と思います。
今回の「魚と水泳」のお話は、まるで、短いドラマのようです。
ふつうの学校生活の中にあるたくさんのできごとが、宝物の
ように書かれていて、読んでいて楽しくなります。
最後の部分。
>心に残しておきたい人がいる。
>心に残しておきたい時がある。
>だから・・・。
>だから、その言葉を残してるんだって。
私は、この言葉を心に残します。
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【3】メールお待ちしています。
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■つながるメルマガをめざす「♪」。
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●もし、お時間がありましたら、今回の発信に対するご感想の
メールを返信してください。
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■返信の仕方■
●このメルマガに返信で届きます。
●ペンネームや、もしお持ちでしたらHPアドレスなどお書き
下さい。
●頂いたメールはHPやメルマガで紹介させていただきます。
もちろん、掲載は困ると言う場合は、その旨をお書き下さい。
掲載いたしません。
どうぞ、よろしくお願いします。
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