━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ■■■■■■  「ごはんのおかず」 ■■■■■■
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           Daily教育コラム第3部
      【発行責任者 はいつ でこ】
 http://village.infoweb.ne.jp/~fwkh8072/deko/gohan/
    バックナンバーも上記にあります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▲目次
【1】本日の発信(No.10) -2003/02/15-(通算293号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】 琥珀(コハク)の時
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「お父ちゃん、きれいやねえ。」
と小学生の娘が本を見せにきました。

それは「鉱石」の本で、見ると、そこには琥珀の写真がありまし
た。
「琥珀って紅茶みたいな石なんやねえ。きれいやなあ・・・。」

数百万年の昔、針葉樹の樹脂や樹液が集まり、できあがった琥珀。
その色は鮮やかでありながら、とても深く感じられました。

「お父ちゃん・・。」

「何?」

「じゃあ、この琥珀の中の泡粒はそんな大昔の空気なのん?」
その琥珀には炭酸水のような泡がたくさん含まれていました。

「うん、そうだよね。」

「すごーい。
  じゃあ、その時の空気がそのままこの中に閉じこめられてるんやね。
 なんか、すごーい。」

当時の娘が、もしロマンティックという言葉を知っていれば、
「すごーい」のかわりにきっとその言葉を使ったんじゃないかな、
なんて勝手に思っています。

琥珀に封印された空気のように、ある時がそのまま、ずっとずっと
続く・・・。

もし、自分が生きていく過程で、
僕にそういうことが許されるなら・・・と考えました。

そのまま死んでもいいとか、そんな深刻な事じゃなく、何て言うの
かなあ、そう、時間が凍ってしまえばいいって、そんな感覚です。

僕はどんな瞬間をその時に選ぶのだろうって。

でも、僕には、はたとは浮かびませんでした。。
少し残念だけど、僕には、それほどの思い入れの瞬間がなかったの
です。

結局、しばらくすると、そんなことを考えたことすら忘れてしまっ
ていました。

それを思い出させてくれたきっかけは、ある方からのメールでした。
その方は湶(いずみ)さんという女性です。

湶さんはこう語っています。
「先生になること、小説家になることが夢です。」って。

そして、
「長電話をすること、それも夢のひとつです。」と・・・。

実は湶さん、生まれた時から、音と距離のある世界にいるのです。
自分の本当の声さえ彼女の耳には届かぬものでした。

そんな彼女の夢のひとつが「長電話」。

ただ「電話をすること」では、ありません。
「長い電話をすること」なのです。

僕は、彼女の夢にある、この「長い」という文字に、忘れてしまっ
ていた「琥珀の時」を感じたのです。
ああ・・・僕はそんなことを考えていたなあって。

長く、長く、ずっと、ずっと・・・。
誰かと電話をしている自分の時がそのまま凍ってしまってもいい。

僕は「長電話が夢のひとつです」という彼女の言葉に、永遠の瞬間
に対する夢を感じるのです。

もちろん、これは、僕の勝手な感じ方であって、彼女自身の感性と
はまったく異なるものかもしれません。

彼女は日常の感性をエッセイとして書きつづっています。
そして、ほぼ毎日、メールマガジンとして発行してくれています。
「ディープ・ブルー」というタイトルのそれは、パステルカラーの
青にも似た輝きをも感じさせてくれます。

彼女自身の言葉による自己紹介はこのようになっていました。
*********************************************************
■私は「音」を知らない。自分の「本当の声」も知らない。
生まれた時から音のない世界に生きる、関西出身の著者が綴る
明るくて笑える、そしてちょっとシリアスなエッセイ達。
by 湶璃那(イズミ・リナ)
*********************************************************

彼女の「ディープ・ブルー」。
バックナンバーの閲覧また購読の登録は下記です。
 http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=003808
 

「琥珀の時」・・・僕はもう一度見つけてみようと思いました。

2003年2月15日



目次へ          ご意見メール