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 第13章 「称徳(しょうとく)と道鏡(どうきょう)」
         (2) 「道鏡さんの人生」
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天皇を民間人にやってもらおうという「天皇民営化」事件。

このおおごとが、なぜだか中学の歴史教科書には載っていない。

だから、知らない人も多いんじゃないかなあ。

ことのあらすじを簡単に紹介しますね。

この事件。
「天皇民営化」っていう名前は僕が勝手に付けたもの。

実際には「道鏡(どうきょう)事件」とか
「宇佐八幡 神託事件(うさはちまん しんたくじけん)」などと
呼ばれている大事件なのだ。

複雑な事件なんだけど、わかりやすくするために、登場人物を3人
にしぼってお話しします。
中には、名前を変えたりした人もいるけど、それもこんがらがって
しまうので1つの名前で通します。

769年。つまり、奈良時代も終わりに近づいてきた頃。

現在の大分県にある宇佐(うさ)神宮から、奈良に神のお告げが届
く。

それは、世の中を揺るがすようなお告げだった。

「道鏡(どうきょう)を天皇にしなさい。
 そうすれば天下太平です。」

道鏡というのは、お坊さんの名前。

もちろん、ただものではない。

「うんうん。ただものじゃないわ。
 名前がすごいもの。
 ためしに、
 私が『ほ』って言ったら、道鏡って言ってみて。(かみさん談)」

うん。いいよ。

「ほ。(かみさん談)」

道鏡。

「きゃはははは。安全第一。急がばまわれ。(かみさん談)」

かみさんが笑った。

意味がわからない。
けれど、聞くと、かえって面倒くさいので、
まあ、気にせずに続けます。

その道鏡さん。

奥深い山の中で修行を積み、念力までも身につけたと言われる人物
だ。

その力で病さえも治してしまうとの評判を聞き、病に苦しむある女
性が道鏡さんを屋敷に呼んだ。

その頃の難病って、体に鬼神が入り込んで起こるものだって考えら
れていたらしい。

だから、病を治すのはお坊さんの霊力が一番だと信じられていたん
だね。

悩める女性は、称徳(しょうとく)天皇さんだった。
この人のお父さんは、あの大仏を建てた聖武(しょうむ)さん。
天皇でありながら「私は仏教の奴隷だ。」とまで言っちゃった人。
きっと、娘の称徳(しょうとく)さんも仏教の力を信じ切っていた
だろう。

信ずる者は救われたのか・・。

仏教だけど、答えはイエス。

道鏡さんは、みごとに治してしまったんだ。

「ねえ、ねえ。
 称徳さんって何歳くらいだったの?(かみさん談)」

40代の前半だったはずだよ。

「ふーん。
 じゃあ、更年期ね。
 このころって気が滅入っちゃうし、だるいし、イライラするし。
 たまんないのよねえ。
 効くのかなあ。
 私もやってみようかしら。
 なまんだーぶ。なまんだーぶ。(かみさん談)」

なんか怖いので放っておきます。

病の悩みから救われた称徳さんは大感激。

道鏡さんにさまざまな報償を与えた。

天皇の恩人となった道鏡さんは、どんどん出世していく。

そして、出会いからわずか5年後には、なんと「法王」という位に
まで登りつめる。

これ、どれほどすごいかって言うと・・。
あの伝説のヒーロー、聖徳太子と同じ位なのだ。
世が世なら、一万円札の肖像になってたかもって位だ。

もう、この上は「天皇」しかないってほどの位。

道鏡さんにとって、人生の絶頂期。

そこに、お告げが届いたわけだ。
「道鏡を天皇にせよ。」ってね。

当時の政界は大混乱。

「道鏡さんを天皇にしよう。」って言う推進派。

「どこの馬の骨かわからない男が天皇になるなんて許せない。」
っていう反対派。

「そんなお告げはウソに決まってる。」

「いや。まことのお告げだ。」

当然のように、収拾がつかなくなっていく。

そこで、称徳(しょうとく)さんはあるアイデアを出す。

「宇佐神宮に、もういっぺん聞いてみまひょ。」

ということになっちゃたのだ。

奈良から大分まで、往復1200キロメートル以上の道を歩いて
神のお告げを聞きに行く。

フルマラソン、28回分だもん。

いやだよねえ。

しかも、責任は重大。

その役に選ばれたのが「和気 清麻呂(わけのきよまろ)」さん
という人。
ちなみに、和気清麻呂さんはお札にもなっている。
 

苦労に苦労を重ねて宇佐にたどり着いた彼が聞いたお告げ。

それは、こういうものだった。

「臣下を天皇とするようなことがあってはならない。
 天皇家の血を引く者のみが天皇とならねばならない。」

つまり。
「道鏡を天皇にしなさい。」という最初のお告げは、誰かが仕組ん
だウソだった。ということだ。

結局、道鏡さんは天皇になれなかった。

そして、称徳(しょうとく)天皇が亡くなった後、左遷されひっそ
りと死んでいく。

とまあ、これが、道鏡事件のあらましです。

「ふーん。
 権力という階段を登り、政界を渡り歩き、結局は左遷されて、別
 の場所に降ろされる。
 それが、道鏡さんの人生だったのね。
 やっぱりね。
 登って渡って降りちゃう。
 そんな名前だもんね。(かみさん談)」

えっ?

「ほ。(かみさん談)」

えっ?

「道鏡。(かみさん談)」

あひゃっ。
わかった。
歩道橋だったのかっ!

「きゃはははは。(かみさん談)」

こほん。

ということで。

次回からは・・・。
歩道橋のような人生を送った道鏡さんの事件。

神のお告げは、誰が仕組んだものだったのか。
また、大分という、奈良の都から見れば遠い遠い場所にある宇佐神
宮が次期天皇について発言できたのはなぜか?

という本格的な謎に迫っていきます。

ではでは。

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メール頂きました。
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■メール頂きました。ありがとうございました。
  掲載不可のお申し出がなかったメールをご紹介させてもらいます!
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●(1)No53「最終兵器」の発信について、
                                「川瀬」さんから。
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 「大仏は聖武天皇が長屋王の怨念と戦う最終兵器だっ
た」というはいつさんの指摘はさすがですね。従来の学
説では、長屋王事件と大仏建立とがつなげて理解されて
いませんので、聖武天皇っておかしな人ということに
なっていました。
 しかし「長屋王」の怨念とは何でしょうか。この点は
いつさんの追及は詰められていないと思います。無実の
罪で殺された人の魂は怨念となってこの世に残り、仇を
なした人に祟ると昔の人は考えていたとは良く言われま
すが、これは無実の罪で殺された人と同じ思いを抱いて
いる人がまだたくさん生きていて、その人達の「怨
念」、正確には「政治的意思」が何か切っ掛けがあれば
噴き出してきて、政治的な激変が起こるおそれがあるか
らこそ、「死者の怨念」と戦う必要があるのです。
 では「長屋王」の怨念、そして当時の多くの貴族や王
族が抱いていた「政治的意思」とは何でしょうか。

■はいつから:
ありがとうございました。
今回も、思わずうなる「川瀬説」。
歩く歴史事典、川瀬さんの説の続きは下記にあります。
必見です。
 http://village.infoweb.ne.jp/~fwkh8072/deko/his/iken/24.htm

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●高柴さんから頂きました。
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初めてメールを差し上げます。
高柴と申します。
肩の凝らない語りを、楽しく拝見しております。

このたび「科学の目で見えてきた日本の古代」と題しまして
古代史関連のメールマガジンを発行いたしました。

極力曖昧な推測等を少なくして、確かな根拠に基づいて
古代史を見直してみようとするものです。
古代史探求者の方々のご支援も頂きながら
月1回程度のペースで発行していく積りです。

通常言われていることとはかなり異なったリアルな古代の姿を
お届けしたいと考えております。
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■はいつから。

もう、タイトルからしてすごいです。
「科学の目で見えてきた日本の古代」。
たの歴でやってる僕の推理があたってるかどうか。
証明されそうです。わくわく。
と言うわけで、僕も登録しました。

下記のページ、ご覧下さい。↓
 http://home.b06.itscom.net/kodaishi/



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