さわやかな風の日でした。
アリ達は、せっせせっせと 働いています。
「よいしょ。こらしょ。」
そこへ、いつもの歌声が聞こえてきました。
「僕は 歌うよ ラララララ。
楽しく 踊るよ リリリリリ。
さあさ いっしょに ルルルルル。」
バイオリンを抱えたキリギリスです。
「また、あいつの歌だ。」
「まったく、いやになっちゃうよな。」
「ああ、毎日毎日あの歌だものな。」
アリ達はうんざりとしました。
日が沈みそうになった頃、
とうとう 1匹のアリが 言いました。
「おい。キリギリス君。
君は働くつもりがないのかい?
毎日、毎日、歌ってばかり。
それじゃあ、冬が来たら困るにきまってるよ。」
「うん。そう言えばそうだな。
それは いい ご意見だ。
今日はもう暗くなってしまったから、
明日から働いてみることにするよ。」
バイオリンを大事そうにしまい、キリギリスは 帰っていきました。
さて次の日です。
この日は、気持ちいいけれど 少し冷たい風が 吹きました。
アリ達は 昨日と同じように せっせと働きます。
「よいしょ。こらしょ。」
そこへ、今日は聞こえないはずの歌が 聞こえてきました。
「僕は 歌うよ ラララララ。
楽しく 踊るよ リリリリリ。
さあさ いっしょに ルルルルル。」
あのキリギリスです。
「あっ。あいつだ。」
「どうなってるんだ。今日から働くっていったくせに。」
日が暮れかかる頃、
とうとう 昨日のアリが 言いました。
「キリギリス君。
いったいどうなってるんだい?
今日から働く約束だったじゃないか。」
キリギリスは頭をかきかき言いました。
「うん。そうなんだ。
でね。今日は早起きをして働いてみたのだけれど、
すぐ疲れちゃってね。
やっぱり僕には無理みたいなのだよ。」
「無理だって?
なんて なまけものなんだ。
まあ、君がなまけるのは君の勝手だよ。
でもね。
ここで歌うのだけは やめてくれないか。
真剣に働いている僕たちのそばで、
歌うのは やめてほしいんだ。」
「うん。そう言えばそうだな。
それはいいご意見だ。
明日から別の場所で歌うことにするよ。」
バイオリンを大事そうにしまい、キリギリスは帰っていきました。
さて次の日になりました。
この日は 少し肌寒い 風の日に なりました。
アリ達は 昨日と同じように せっせと働きます。
「よいしょ。こらしょ。」
今日は、聞こえないはずの歌は 聞こえてきませんでした。
「ああ、今日は聞こえないぞ。」
「うん。これなら、はりきって働けるぞ。」
アリ達は、いつもにまして せいを出しました。
ところが・・・。
ドカッ。
「いてて。」
「気をつけてくれよ。」
ドサッ。
「しまった。また荷物を落としちゃった。」
「どうしたんだ?これで3回目だぞ。」
なんだか、ちぐはぐしてしまうのです。
「おかしいなあ。調子がでないや。」
アリ達は、ぶつぶつ言いながら働きました。
日がま上にきた頃、1匹のアリが言いました。
昨日のアリです。
「そうだ。リズムが変なんだよ。
わかったぞ。
歌だよ。
みんな歌ってみないか?」
「歌?」
「うん。あの歌だよ。ほら。」
そう言って、歌い始めました。
「僕は 歌うよ ラララララ。
楽しく 踊るよ リリリリリ。
さあさ いっしょに ルルルルル。」
合わせるように、みんなも歌い始めました。
すると どうでしょう。
さっきまでが ウソのように てきぱきと仕事が進んだのです。
日が暮れかかった頃、
とうとう昨日のアリが言いました。
「僕、キリギリス君のお家に行ってみるよ。」
みんなは
「僕も行くよ。」と言いました。
冬は すぐそこまで 来ています。
おわり。