妖精の背中には、すきとおったうすい羽が2枚ついていて、見ると
小さな穴があいていました。
「ははあ、アザミのとげにささったんだな。」
あおむしは、ずっと前に、同じように困っているトンボに出会った
ことがあるのです。
妖精はこくんとうなづきました。
「心配いらないよ。」
ずっと前に、トンボにしてあげたように、口から白いねばねばする
糸をしぼりだし、妖精の羽の穴をふさいであげました。
妖精は そうっと羽ばたいてみました。
すると小さな体がふわりと舞い上がりました。
たいそう喜んだ妖精は、おれいがしたいと言いました。
あおむしは、少し考えて言いました。
「そうだ。
虹色の宝石をくれないかな?
僕は、一度だってきれいと言われたことがないんだ。」
妖精は右手に持っていた金色のつえをふりあげました。
その先からあふれでてきた光のつぶが、あたりの石をつつみこみ、
虹色の宝石に変えました。
16個の指輪ができました。
「ああ・・。
僕の足の数だけ作ってくれたんだね。
どうも、ありがとう。」
妖精はにこりとほほえみ、ふわりと飛んでいきました。
あおむしは、全部の指輪を足につけ、誰かがくるのを待ちました。
少しして、ミミズとオケラがやってきました。
「なんてきれいなあおむしだ。
ステキだなあ。」
ふたりは、そう言いました。
はさみむしも、だんごむしも、そう言いました。
かたつむりも、てんとうむしも、そう言いました。
あおむしは、とても良い気持ちになりました。
やがて、夜がやってきました。
さあ、お家に帰ろう。
そう思ったあおむしはびっくりしました。
足が動かないのです。
宝石はとても重く、ぴくりともしません。
「うわあ、こまったぞう。」
いくらがんばっても、全然動けませんでした。
ずいぶん時間がたちました。
力つきたのか、目も口も動かなくなってしまいました。
朝がきて、それから、また夜がきました。
あおむしは、木の実のように固くなり、じっとしたままでした。
7回目のお日様が顔を出したときです。
「ぴしぴしぴし」と音がしました。
あおむしの背中がわれる音でした。
その割れ目から小さな黄色いちょうちょが出てきました。
朝の光を受けて、きらきらと輝く羽。
ちょうちょは青空に羽ばたきました。
ちょうちょは、自分があおむしだったことも、
そして、妖精にあったことも、すっかり忘れていました。
おわり。
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