ほんのさっきまで。
旅人は気持ちよくマントを脱いだものだと思っていました。
てっきり喜んでいるものだと・・・。。
まさか、暑さに倒れてしまうとは・・。
太陽は心配になりましたが、どうすることもできません。
暖めれば暖めるほど、旅人の顔は真っ赤になっていきま
す。
とうとう彼は気を失ってしまいました。
それを見ていた北風が言います。
「今度は俺様にまかせろ。
見てろよ。」
北風は思い切り息を吸い込みました。
そこら中の雲があつまり、大きな雨雲になりました。
雨雲は、どしゃ降りの雨を降らせます。
強い雨は旅人の顔をたたきます。
少しずつ、
旅人の顔から赤さがとれてきました。
しばらくして、
ふと、旅人が目を覚ましました。
北風は胸を張って言いました。
「どうだ、最後は俺の勝ちだな。」
太陽は悔しがります。
「なんだと、引き分けじゃないか。
ようし、もう一度勝負だ。」
その声を耳にした旅人が見上げて言いました。
「いいかげんにして下さい。
おいらを なんだと 思ってるんですか。
もう、こんなことは、たくさんだ。」
旅人の声が天まで届きました。
太陽と北風は目を合わせます。
太陽は恥ずかしくなり、目をふせました。
すると、その光が少し弱くなりました。
北風は恥ずかしくなり、目をふせました。
すると、その雨が少し弱くなりました。
少し弱い太陽と少し弱い北風。
二人の間に、虹が生まれました。
この世で最初の虹が生まれたのです。
旅人は大きく息を吸い込みました。
そして、もう一度、力強く歩き始めました。
そう。
虹に向かって。
おわり。