いたちの3兄弟が家を造ることになりました。
一番上の兄さんは、わらの家を造ることにしました。
そこらにある わらを集め、たった1日でできあがりました。
2番目の兄さんは、丸太の家を造ることにしました。
山で集めた木を組み立て、1週間かかってできあがりました。
ぽとりと汗が落ちました。
弟はレンガの家を造ることにしました。
たくさんのレンガをていねいに積み重ね、1週間かかってできあが
りました。
ぽとりと汗が落ちました。
弟は言いました。
「ふう。
やっとできたぞ。
僕は、台風が来ても大丈夫なように、レンガで造ったんだ。
ずいぶん、きつかったよ。
でもね。
これで、どんなにすごい風がふいても、へっちゃらさ。」
2番目の兄さんが言いました。
「僕は、洪水の時のことを考えたんだ。
もし、大洪水になっても大丈夫。
僕の家はプカリと浮いて丸太の舟になる。
すごいだろう。
だから、安心なんだよ。」
二人は目を合わせて、にこりとしました。
汗がきらりと輝きました。
そして、聞きました。
「兄さんは、どんな時のことを考えて、わらの家を造ったの?」
1番上の兄さんはきょとんとして言いました。
「えっ?
どんな時って、ふつうの時だよ。
台風でも洪水でもない、ほら、そよ風がふくだろう、
そんなふつうの時さ。
そうそう。
わらの家に住んでみてさ。
わかったことがあるよ。
あのね。
そよ風は、わらの家が好きなんだ。きっとね。
だからね。
そうっとかあるく遊びに来るんだ。
そしてね。
すてきな香りを運んできてくれるよ。
そんなふつうの時さ。」
ふたりは目をパチクリさせて聞きました。
「じゃあさ、台風の時はどうするの?」
「じゃあさ、洪水の時はどうするの?」
1番上の兄さんは、またまたきょとんとして言いました。
「うん。
そんな時はさ。
君たちの家に泊めてくれよ。
ね。
いいだろう?
だからね。
だから、今日はさ。
僕の家でお茶を飲もうよ。
ほら、見てくれよ。」
1番上の兄さんは、肩からさげた小さなカゴを見せました。
「あそこの山からね。
アップルミントの葉を少しだけ摘んできたんだ。
どうだい?
いいにおいだろう。
素敵なお茶になるぞ。
ね。
うちへ行こうよ。
さあさ、早く、早く。」
ふたりは、目を合わせました。
そして、にこりとして言いました。
「うん。行こう、行こう。」
南からのやわらかな風が、ふきました。
風はアップルミントの香りとイタチ兄弟を、わらの家へと運びまし
た。
かあるく、かあるく。そうっとかあるくね。
おわり。