[猪木の沈黙」

遠藤周作の代表作に「沈黙」がある。

江戸時代はキリスト教禁止の歴史を作り出した。
信者はイエスやマリアの絵を踏まされた。
しかし、それを拒む熱心な者は牢に入れられ、地獄の責め苦にあう。
重い石を抱かされ、水につけられ、木刀で叩かれる。
まさに命をかけて信仰を守ろうとする信者がそこにいた。

しかし、信者も人間である。
ぐらつきかかる信仰のともしびを、確かめたくなる。
そして、イエスに、神に自分の行動を聞きたくなる。
「私は、どうすればいいのですか?教えて下さいイエス様。」
しかし、イエスは答えない。
そこには沈黙の時間が流れるだけであった。
そして、、。

その「神の沈黙」をテーマにした作品である。
教科書にも載った作品であるからご存じの方も多いと思う。

私はあまり宗教的な知識もなく、「そんなものなのかなあ」的な感想を持った程度であった。

猪木が橋本と小川にタッグを組むことを命じた。
2人の間に共闘する必然性はないように思える。
また、実際に両者とも困惑の色を隠していない。
このタッグは何の脈絡もなく出てきた様相が強い。

では、ファンは望んでいるのだろうか?
ファン投票をするわけではないのではっきりした数字が出るはずもない。
しかし、タッグ共闘かシングル決戦かと言われれば、やはりシングル対決の方が希望者は多いと思う。

実は、そんなことは猪木は百も承知のはずなのだ。
だって、私だってわかるのだから、、。

じゃあ、なぜ。
橋本もそう思ったはずだ。
小川だって少しはそう思っているだろう。
藤波も同じ気持ちだろう。

「なぜなんだ猪木さん、、。」
私は部屋の猪木のポスターに語りかけた。
猪木は「ダー」のポーズをとったまま何も言わない。

私の中の猪木は沈黙を守ったままだった。


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