巨人の星」をご存じですか?

父、元巨人軍「星一徹」は、その子「飛雄馬」を鍛えに鍛える。
まさに千尋の谷に突き落とす。
そして自分が若い頃培った精神「根性」を伝授する。
血ヘドを吐きながら「飛雄馬」は成長し、大リーグボールなる魔球をひっさげて、巨人軍のスターとなる。

しかし、何とその子の前に立ちふさがったのは父「一徹」であった。
ライバル球団中日ドラゴンズにコーチとして入団した父は「オズマ」という選手を育て上げる。
そして、我が子の切り札、大リーグボールを完膚無きまでに叩き潰す。

「飛雄馬」の姉「明子」は父と弟の対立に心を痛めながらも、ひっそりと2人を見守って支えていく。

「四角いジャングル」などでプロレス界にも多大な影響を及ぼした故 梶原一騎原作の感動超大作野球漫画である。

この作品は僕の子供心にも大きな影響を及ぼした。
純真だった僕は思った。
すごい親子、師弟関係があるもんだなあ。
姉ちゃんていいもんだなぁ。
ライバルって究極までお互いを高め合うんだなぁ。

そして、僕は成長するにつれ「巨人の星」の虚構に気づいていった。
過保護な親が社会に充満し、緊張感のない家庭を作り出す。
上司は自分の保身に精一杯。部下の成長なんて知ったこっちゃない。
ライバルは相手を蹴落とす術を研究するばかり。
社会人はみんなこうやって出世街道を模索する。
「巨人の星」的人間関係なんて存在しない。

しかし、しかしである。
僕は10.11東京ドームを見てしまった。
父「猪木」に育てられたオズマ「小川」が飛雄馬「橋本」を叩き潰す。
そして、それを複雑な思いで見守る明子「藤波」。
試合後、お互いを認め合い、感涙にむせぶ男達。
そのシーンを目にしてしまった。

ひよわな現代社会に置き去りにされた「巨人の星」。
それを思い出させてくれたのは、やっぱり、プロレスだった。
やっぱりレスラーその人だった。

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