ハッピーエンド

 人間は誰も皆、苦労をしていると思う。
そして僕は何らかの形で苦労は報われる、と信じている。
いや、そう信じなければ生きていけないと思っている。
だから、僕は「ハッピーエンド」漫画が好きだ。


 極めて個人的な思い入れだが、漫画はハッピーエンドであるべきで、
読者に希望を与えるべきだと思っている。
特に「人生これからの子供達」には絶対にそういう漫画を与えてほしい。

 そういう話を学生時代「漫画同好会」会員だった僕は仲間に語った。
すると、仲間の一人が僕に言った。
「では、君は『あしたのジョー』を認めないのかい?」
僕は言葉に詰まった。
彼はたたみかけるように言った。
「ジョーは、どう読んだって、ハッピーエンドじゃないぜ。
 確かに燃え尽きて真っ白な灰になったっていう面だけなら充実してるかもしれないけれど、、。
 チャンピオンにもなれなかったし、葉子との愛も成就しなかった。
 理屈抜きにハッピーとは言えないよ。
 君は、漫画の歴史に残るこの作品を認めないのかい?」
「考えてみるよ。」と僕は言った。

 結局、学生時代の僕には答えが出せなかった。
しかし、大人の社会を体験した今の僕にはわかる。
人生のハッピーは、けっして満月ではない。
それは、ある部分では満ち足りず、欠けた部分を持つ三日月なのだ。
そして、その欠けた部分ゆえに輝きを実感できるものなのだ。

多くの挫折を残しながらも「あした」から解放されたジョーの、あの最後の微笑み、、。
ジョーはハッピーエンド漫画の代表作である。
(了)



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