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【1】M子ちゃんにとっての学校(1)
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M子ちゃん(小学4年生女の子)が「学校へ行きたくない。」と言
いだ したのは小学校3年の時のことでした。

ご両親はM子ちゃんに理由を尋ねます。

M子ちゃんはこう言ったそうです。
「私は、どうしても学校が好きになれない。学校は、いい人と悪い
 人を決める所で、支配する人とされる人に分けられる所みたい。」

お母さんはM子ちゃんの感じ方にびっくりします。
小学校3年生が学校というものを自分なりに感じているという事実
に驚きます。

僕もびっくりしました。
「学校は、いい人と悪い人を決める所で、支配する人とされる人に
  分けられる所」
という表現は小学3年生でできるものなのでしょうか・・。
それ以前に、小学3年生で「学校とは・・。」という定義づけをし
ようとするものなのでしょうか・・。

教員経験のある僕にとって、正直に言うとM子ちゃんの感じ方は
ショック でもありました。
「学校はそんな所じゃないよ。」と言いたい気がします。

しかし・・・。
考えれば、「学校とは何?」という問いに対する答えは千差万別で
あり、 それがある1面しか捉えていないものだとしても、正しい
としか言えないものだと思います。

実際に、ご両親から相談を受けた担任の先生がM子ちゃんにこう言っ
たそうです。
「言いたいことは先生にもよくわかるよ。
 けれど学校には、他にいろんな良い面がたくさんあるよ。」

しかし、M子ちゃんはこう答えます。
「それも知っています。」

先生はさらにこう言います。
「先生は、学校でいろんな体験をしてもらいたいな。
  嫌なことや、おかしいなって思うことも体験してほしいな。
  そして、がまんしたり、強くなったりする力を身につけてほしい
  な。」

僕が担任だったら同じような言葉を言ったかも知れません。

しかし、ご両親はこの先生の言葉に、ある種の違和感を覚えます。

「娘が学校に感じているおかしさは『体験し、がまんする』べきも
  のなのか?
  それによって『強い』子になるべきなのか?変わらなければいけ
  ないのは娘なのか?」

ご両親はM子ちゃんにこう言います。

「心配はいらない。
  学校に行かなくてもいい。
  先生のように上手には教えられないけど、勉強は家で教えてあげ
  る。」

そして、ご両親はそのために大きな決断をされます。

(つづく)



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