拝啓、はいつでこ様

コラム興味深く拝見しています。
私は、小学校5年の息子を持つ父親です。

息子が通学を拒否し始めたのは去年のことでした。
ある朝、
「おとうさん、おかあさん、僕、もう学校に行くのがいやになった。」と
言うのです。

「不登校」という言葉はもちろん知っていたし、社会問題になるほどの
多くの子ども達が悩んでいることもしっていました。

しかし、妻もわたしも呆然としました。
うちの息子がなぜ不登校になってしまったのか。
なんとかして、登校できるようにしてあげたい。いや、そうしなければい
けない。

クラスの友だちが悪いのか、先生とトラブルがあったのか。本人が悪いのか。
自分たちの育て方が悪かったのか。仕事も手につかない日々でした。

本人はもちろん、担任の先生とも何度も話し合いを持ちました。
先生は、息子に困っていることがあったら何でも言いなさいと言ってくれま
した。
しかし、息子は答えに窮してしまうのです。
それどころか、だんだん口を閉ざしていくようにさえ思えました。
そして、時折泣き出しそうになります。
私と妻もだんだん気が重くなり無口になっていきました。

何とか原因を知りたい、何とか自信を持たせたいという思いとは全く逆の結
果を招いていたのです。

そんな時、知人から、はいつさんのことを聞きました。
さっそく、はいつさんのHPを拝見しました。

はいつさんのコラムは私たちに勇気をくれました。
コラムを読んで涙がこぼれました。

特にはいつさんが娘さんの入学にあたっておっしゃったという次の言葉は心に
深く残りました。

「お父ちゃんにとって小学校はとても楽しい所だった。
 けれど、ちび(僕は娘をこう呼びます)にとってどんな所になるかはわからない。
  だから入学は『おめでとう』とは言えないな。
 ただ一つ言えることは、みんな結局、学校をやめていくってことだ。
 6年間通って卒業してやめる子もいる。
 いじめられたり、トラブルを起こして途中でつらくなって、やめちゃう子もいる。
 他にしたいことができて途中でやめる子もいるかも知れない。
 ちびがどんなやめ方をするのかはわからない。
 けれど、それが、どんなやめ方であっても『おめでとう』だ。」

こんな考えの方がいるのかと驚きました。
私たちは息子の不登校を「おめでとう」とは言えません。

しかし、このコラムは私たちに光をくれました。

私たちは、学校に行けるように自信を取り戻すのではなく、学校に行かなくても大丈夫
だという自信をつけるべきではないかと思い直したのです。

妻と私は息子が一番自信を持っているものは、釣りだと思いました。

学校で学ぶ時間を釣りに費やしてみたらどうだろうかと息子に話してみました。
息子の目が輝いた気がしました。
私も時間の許す限り一緒に行きました。

不安がなかったわけではありません。
学校にも行かず、釣りをするような毎日が、子どもの役に立つのだろうか。
なまけぐせのついた子どもになるだけではないか。これが教育なのだろうか。
正直に言って近所の人たちの奇怪な者をみるような目も気になりました。

とにかく1ヶ月ほど釣り三昧の日々を送りました。
私は釣った魚の名前や習性を息子に聞きました。
それに、よく息子は答えてくれていました。

ある時、息子が「魚の図鑑を買ってほしい。」と言ってきたのです。

私たちは早速本屋へ行き、購入しました。

その日以来、息子はいろんな魚のことについて調べ始めたのです。
イラストをレポート用紙に書き、調べたことをまとめるということを始めました。

夏休みの自由研究の課題に頭を痛めて、いやがっていた息子が自分から研究を始
めたのです。
研究と呼べるようなものかどうかはわかりませんが、とにかく始めたのです。

私たちは、なにか方向が見えた気がしました。

そして、ある時、釣りに出た息子がビニル袋に空き缶をかかえて帰ってきたのです。
それは、海に散らばっているゴミでした。

家のかたづけさえいやがる息子が、自分からゴミを拾っていることを私は本当に嬉
しく思いました。
週に1度はゴミを拾うと決めたんだそうです。

息子の不登校をおめでとうとは言えませんが、けっして無駄ではなかったと思える
ようになりました。

はいつさんが「家庭教育独立宣言」という活動をされているのに、もし、少しでも
お役に立てばと思い、経験談をメールにして送りました。

息子はあつしと言います。
あつしもはいつさんのコラムを子どもなりに真剣に読んでいます。
どうぞ、今後ともがんばってください。



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