まずは教科書から見てみます。
------------------------------------------------------------
中国の歴史書「魏志(ぎし)倭人伝(わじんでん)」によると3世
紀中頃、邪馬台国(やまたいこく)の女王卑弥呼(ひみこ)が
魏(ぎ)に使いと奴隷(どれい)を送り、「親魏倭王」と彫られた
印や鏡を与えられたという・・・。
ちなみに古来より中国は日本のことを「倭国(わこく)」、日本人
を「倭人(わじん)」と呼んでいた。
-------------------------------------------------------------------
ジャジャジャジャーン。かの有名なヒミコさんの登場だ。
そうそう、まず、僕が「ヒミコさん」とわざわざ、カタカナで書い
たわけから話します。
いや、別にひらがなでもいいんだけど・・・。とにかく漢字以外な
らOK。
そもそも「卑弥呼」ってのは、中国の人が作った「あて字」。
具体的に言うと、暴走族の人たちがガードレールなんかに漢字を使っ
て書いてる落書きと同じだ。
たとえば、僕が暴走族グループ「キングダム」の親分だとする。
「おいっ、子分ども。ガードレールに落書きしようと思うんだが、
よそのグループもやってるように漢字でグループ名を書きたいん
だ。」
「へへえっ。」
「で、今からみんなに紙をくばるんで、それに書いてみてくれ。」
「親分、なんだか笑点みたいですぜ。(作者注「笑点」:テレビ番
組。落語家が数人出演し、問題に答え、そのとんちやアイデアを
競う。いいお答えを出すとざぶとんがもらえる。僕が見ていた頃
<1970年代>は司会が三波伸介さんという素晴らしい芸人さん
だった。)」
「じゃあ、おれは円楽か!(作者注「円楽」:三遊亭円楽さんのこ
と。笑点の名司会の一人。)
まあ、いいや。おっ!さっそく手が挙がったね。
よしっ、三郎、見せてくれ。」
「へえ。親分、キングダムですから『金具太六』って書くのはどう
でしょう?」
「ばかやろう、それじゃ、まるで金物屋の看板じゃねえか!
通りかかった皆さんが『金具(かなぐ)のふとろく』って読んじ
まうぞ。
全然迫力ないじゃないか!
おいっ、三郎のざぶとん、全部とれ!
他にねえのか!他に!
何か、こう、強そうで、それでいて悪さしそうで、けど、青春の
夢を感じさせる、そんな感じのやつ。
おおっ!吉田の手が挙がったね。はい、吉田ちゃん。」
「へえ。親分、それなら『筋愚蛇夢』ってのはどうでげしょう。」
「おおーー。それは、いい。しびれるねえ。
さすが吉田。漢字検定3級はだてじゃないね。
ざぶとん1枚やっとくれ。」
「ありがとうございます。
ちなみに、あっしは、そろばんも3級です。
ところで、親分。うちの妹、3才なんですがね。毎日ふすまに落
書きしてんですよ。で、かあちゃんに尻ぺんされてんですがね。
俺達も、いい年こいて、落書きってのも・・・なんか・・青春の
夢とはほど遠いような、むなしいような・・。」
ヒュウウウウーーーー。
まあ、そういうもの。
つまり「キングダム→筋愚蛇夢」のように「ヒミコ→卑弥呼」って
あて字なんですね。
もう少し具体的に言うと・・。
魏志倭人伝の作者は「陳寿(ちんじゅ)」って人です。
陳寿さんは「倭人伝」を書くにあたって、日本人か、または日本に
詳しい人に、こう聞いたはずです。
「ふうん、女王か・・・。
女が王だなんてねえ・・変な国だねえ。(作者注:この頃の中国
では、こんなふうに女の人を軽く見ていたのだ。) まあ、いいや。
で、なんてえのその女?えっ?ヒミコ?
へえ、ヒミコってよばれてるのか・・。」
で、中国にはひらがなやカタカナはありませんから、漢字で記録し
なきゃいけません。
というか、ひらがなやカタカナは日本人が漢字を加工したもんです
よね。
原料を輸入して加工する。日本人のお得意のやり方です。
まあ、それはともかく、陳寿さん、知恵をしぼったはずです。
「ヒミコか・・。どんな字で書こうかなあ・・。やっぱり、倭人ご
ときに、あんまりいい字は使いたくないしなあ。
うーん。「ヒ」の字で、何かないかなあ・・。
そうだ、卑しい(いやしい)って字をつかおっと。
卑怯者(ひきょうもの)の卑でもあるし、こりゃ、ちょうどいい
や。
卑弥呼・・。うん。これでいこう。」
と、こんな感じだったはず。
暴走族が「筋愚蛇夢」って知恵を出し合ったようなもんだ。
そもそもヤマタイコクだって「邪馬台国」ですもん。
ちゃあんと「邪悪(じゃあく)」や「邪道(じゃどう)」の「邪」
が最初の字に選ばれている。
現代の日本なら、名前に「卑」や「邪」の字を使っても、違和感は
ないだろう。
大仁田厚さんのように「邪道」を売り物にする人もいるくらいだ。
(作者注「大仁田厚さん」:プロレスラー。政治家。タレント。涙
のカリスマと言われ、みずから「俺の生き方は邪道(じゃどう)
じゃ。」と叫ぶ人。)
けれど、当時の中国はあきらかによその国に差別的だった。
きっと「ヒミコ」さんは「卑弥呼」って書かれるのを喜びはしなかっ
たはずだ。
だから僕は、「ヒミコ」ってカタカナで書く方がしっくりくると思
う。いや、ひらがなでもいいんだけど・・。ってさっきも書いたか!
まあ、いずれにしても、陳寿さんのざぶとん一枚とりあげたいっ!!
(次号に続きます。)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【2】ひとこと感想、頂きました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「酒井」さんからです。
******************************************
いつも読んでます。たとえ話のたくみさに驚いています。
現在、中学の教員をしています。理科担当なのですが、歴史には
以前から興味を持っていました。
次回からは邪馬台国のことでしょうが、どのような切り口なのか
楽しみです。
これからもがんばって下さい。
******************************************
酒井さん、おしりがこそばくなりました。ありがとうございました。
今回から「邪馬台国」はじまりました!よろしくおねがいします。