やってきました。金曜の夜の歴史エンターテイメント。
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イトルでメールを頂きました。これは、必見です。↓
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第6章 蘇我氏の時代 (5)「三船さんの遺言」
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「淡海 三船(おうみ の みふね)」さん。
あまり聞き慣れない名前じゃないだろうか・・。
僕らの世代は(ちなみに現在(2003年)、僕43才です)、
「みふね」と言えば、「世界の三船」。
そう、三船敏郎さんを思い浮かべるなあ・・・。
黒沢明監督のもと、演じた名作映画「羅生門」。
すごかったなあ・・・。
あれ以来、世界に通用する国際スターの称号を得た三船さんだもの
なあ・・・。
で、淡海三船(おうみ の みふね)さんに話を戻すと・・。
日本の正式な歴史書とされる「日本書紀」ができた2年後の722
年におぎゃあと生まれた三船さん。
日本書紀はもちろん古事記そして、漢詩など中国の書物を読みあさ
り、その名が日本中に知れ渡る、すごい秀才となった。
つまり、8世紀中頃の、「みふね」と言えば「淡海三船」だったのだ。
その三船さんに、ある仕事の依頼が舞い込んだ。
「三船さん、あなたに、やってもらいたいことがあるんです。」
「はて、なんでしょう?」
「いえね・・。
今までに亡くなった天皇に名前をおつけしたいのです。」
「ほほう、なるほど・・・。
いわゆる『おくり名』ですな。」
「はい、そうです。
まあ、亡くなった人におくる戒名(かいみょう)みたいな物ですね。
で、まあ、わが国も、世界に通用するように漢字で『おくり名』を
つけて頂きたいわけです。
そんな難しいことができるのは、日本一の秀才、三船さん、あなた
しか、いまへん。」
「なんか、急に関西弁になってますよ。
まあ、いいや。
わかりました。やってみましょう。」
「ほんまでっか?
じゃあ、今までの歴代天皇49人、よろしくお願いしまっせ。」
というわけで、三船さんは天皇の名付け役となったのですね。
これは、責任重大です。
僕なんか、たった二人の我が子の名前をつけるのに
「あーでもない、こーでもない。」とかみさんと何日も悩みに悩ん
だんですよ。
それが、49人・・・・。
赤穂浪士より多いんですもん。
しかも、当時は、神とあがめられる天皇の名前ですよ。
三船さん、がんばりました。
それまでも読み親しんできた「日本書紀」「古事記」などを、さら
に精読し、語り部(かたりべ)が伝える伝説なども熱心に聞いたこ
とでしょう。
いわば、天皇のエピソードに関しては、右に出る者がない第1人者
になったのです。
そして見事に大役を果たしました。
例えば、16代天皇。
高台から見た庶民の家から煙が上がっていないのを見て、
「これは、皆が貧乏をしていて、料理をする食材もないのだろう。」
と思い、税を免除したという逸話が残っている。
この天皇に、三船さんは、こういう名をおくった。
仁愛と徳にあふれた、「仁徳」天皇。
例えば、荒々しい性格で、狩猟を好み、ぜいたく三昧(ざんまい)、
気に入らぬ人は残酷に殺してしまったという、25代天皇。
その天皇に対し、三船さんは「武烈」天皇という名をおくった。
また、跡継ぎがいなくなり、あやうく天皇中心の政治体制が壊れか
けたころ・・・。
かろうじて血縁関係のある王として、そのピンチをすくったと伝え
られる26代天皇。
三船さんは、体制を継続させたという意味で「継体」天皇という名
をおくった。
「へえ、うまいこと名付けてるわねえ・・・。
三船さん、やるわねえ・・・。
そんな、すごい人が歴史の教科書に出てないってのも不思議ねえ。」
とかみさん。
で、その三船さん。
蘇我馬子さんや聖徳太子さんの頃の33代天皇になんと名付けたか
を思い出して欲しい。
「推古(すいこ)」天皇と名付けたのだ。
考えて欲しい・・・。
この推古天皇、実は、歴史上初めての女性天皇なのだ。
初ですよ。初。
ならば、初代女性天皇にふさわしい名をおくらないだろうか・・?
例えば、「始麗(しれい)」天皇とか「天女(てんにょ)」天皇と
か・・・。
おそらく世界で最も日本書紀を読んだであろうと思われる三船さん
が、なぜ「推古」という名をおくったのか?
「推古」・・・・。
「古きことを推し量れ(おしはかれ)、推理せよ。」・・・・。
「初代の女性天皇ということに目を奪われるな、推理せよ。」
と三船さんは僕らに言っているのだ。
やはり、僕らは推理しなければならない。
少なくとも、馬子さんの時代、蘇我氏の時代は、日本書紀の伝える
歴史、教科書に載せられている歴史をそのまま信じるのではなく、
感性を持って分析、推理しなければならない。
いや、別に義務じゃないんだけど・・・。
推理した方が楽しいし・・・。
「古きことを推理せよ。」
それが、三船さんの遺言かもしれない。
で、次回は、僕なりの「真説・蘇我氏の時代」をお送りしたいっ!
(つづく)