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  第7章  史上最大の政治改革「公地公民」(1)
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古今東西、新しい権力者は「改革」をうたい文句にしたがるもので
す。
でまあ、そんなたいした改革でもないのに、大騒ぎする。
平成15年、時の小泉首相も「改革」を唱えていた。
たとえば、道路公団民営化・・・。郵政民営化・・・。

この2つが大きな目玉だとして、政治が動き、政治家が踊り、マス
コミがあおる。

はっきり言おう。
いや、僕がはっきり言ったって何の意味もないのだけど・・。
じゃあ、こっそり言おう。
僕は、どっちでもいい。
道路の持ち主が、国でも、民間の会社でも、どっちでもいいんだも
ん。
郵便局だってそう。
どんな山村にだって、しっかりハガキが届けば、運んでくれるのが
公務員でも会社員でもどっちでもいい。

だから、僕にとっては、そうたいした問題ではないんです。

でも・・・。
でもである・・・。

いきなりお役人がやってきて、こんなことを言われたら・・・・。

「こんにちは。はいつさんのお宅ですね。」

「へえ。そうでおます。」

「あのですね。
 明日から、あなたの土地は、あなたのものじゃなくなります。」

「えっ?あのう、すみません。もう1回、言ってもらえます?」

「はい、明日から、あなたの土地は国のものになります。」

どうです?
みなさんだって驚くでしょ。
道路や郵便局は、別に誰の物でもかまわない・・。
でも、自分の土地となると、そうはいかないでしょ。
(ちなみに、僕は自分の土地なんて持ってません。
 けど、まあ、話を進めるために、そうしました。)

実は、これが、教科書にも太字で載っている、あの有名な
「公地公民」の正体なんです。

中臣鎌足と天智天皇(中大兄皇子)が取り組んだ改革の目玉なんで
す。
もっとも、僕はこれに孝徳天皇もからんでいると見ていますが、こ
こではその話は置いておきます。
詳しくは前号までのバックナンバーを見てね。

豪族の土地を国が取り上げ、豪族が所有していた人民も国の物にす
るってんです。

ようするに、私有財産を認めないってこと。
つまり、社会主義的な雰囲気のする政策ですね。
この話、マルクスやレーニンが出現する1000年以上も前ですよ。
そんな大昔に日本で社会主義的な政策が行われたんです。

思想的なことなんて抜きにすれば、これ、ものすごく驚きがいのあ
るできごとです。
ひえーーー。

もう1回言います。
これ、ものすごい改革ですよ。
道路も郵政も「ぶっとび」のスーパー改革ですよね。

で、考えてみると・・・。
その道路や郵政だって、すごい抵抗勢力ってのが存在します。
なかなか、前に進まない。
だったら・・。
だったら、この当時の抵抗たるや想像を絶するパワーだったはず。

たしかに、当時の最強の豪族である蘇我氏の本家は暗殺によって倒
した。
けれど、まだまだ、豪族は山ほどいるんだから・・・。

全部の豪族が素直に、
「はい、どうぞ。」って言って、土地を差し出すなんて考えられな
い。

「オレの土地を取り上げるなんて許せるものかっ!」
そういう怒りがうず巻くに違いないですよね。

そうなれば、また内乱です。
「公地公民」を強行すれば、国内に大きな戦争が起きるに違いない
です。

でも、実際はどうだったか・・・?

実は、大きな混乱もなく、公地公民は実施されているんです。
どの教科書にも、あっさりと記述されてますよ。
「公地公民が行われた」って。

これ、不思議でしょ。

これこそ、日本の政治改革史上最大のミステリーです。

入鹿を暗殺した中心人物、中臣鎌足は、いったい、どんな手段を使っ
て「公地公民」を実施したのだろう?

僕は声を大にして言いたいっ。
「みなさん『公地公民』をあっさり通り過ぎてはいけません。
 その裏にある『からくり』をときあかそうではありませぬかっ!」

この時、横で見ていた かみさんが「ぷぷぷ」と笑った。
「どうしたん?なに笑ってるん?」

「あのね、公地公民って高知県民に似てるなって思いついたわけ。
 ぷぷぷ。」

なぜ、こんなつまらないことで笑えるのか不可思議である。

まあ、とにかく、僕はこの謎を解いていくうちに、あの「ヒミコ」
の謎も解けてしまったのである。

というわけで、また再来週。

ではでは。

(つづく)



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