同時代に完成した2つの歴史書。
2つはあたかも兄弟の漫才コンビのようにも思える。
そう「いとし・こいし」のようなものだ。
(作者注:いとし・こいしコンビは昭和を代表する漫才コンビ。
とても兄弟とは思えぬ風貌と、性格の違いがすさまじい位置
エネルギーを産んだ。)
古事記「兄のコジでーす。8才年上でーす。」
日本書紀「弟のショキでーす。8才年下でーす。」
古事記「僕らの生みの親は天武(てんむ)天皇ですねん。」
日本書紀「へえ、そうですねん。
天武はんが『歴史書つくれー』言いはって、僕らが
作られ始めましてん。」
古事記「難産でしたなあ。なんせ妊娠30年でっせ。」
日本書紀「そうそう。
わてなんか、40年近くもかかって、ようやく完成どす
ねん。」
古事記「そうそう。
ショキちゃんなんか、産まれた時はもうヒゲぼうぼう。」
日本書記「なんでやねんっ。」
古事記「僕らのおやじ、若い頃、競馬好きでしてねえ。」
日本書紀「コジにいちゃん。それ、ほんまの話か?」
古事記「あれ、ショキちゃん、知らんかった?、
で、呼ばれとったんよ、おやじ。
大穴皇子(おおあなの おうじ)って。」
日本書紀「あほう。
それを言うなら大海人皇子(おおあまの おうじ)や。」
古事記「まあ、どっちでもええがな。
とにかく、うちのおやじは、体弱くてねえ・・。」
日本書紀「ええっ?ほんまか?」
古事記「ああ。魚食うと、すぐにカイカイができるねん。」
日本書紀「カイカイ?」
古事記「そや。カイカイや。
でな。かゆくてかゆくて、暴れ出してしもうてな。」
日本書紀「ほう。そりゃ、おおごとや。」
古事記「とうとう、やっちまったんよね。
じんましんの乱。」
日本書紀「あほう。そりゃ、壬申(じんしん)の乱や。」
古事記「もう、やめさせてもらうわ。」
日本書紀「そりゃ、こっちのセリフや。」
ああ、いい感じだ。
実にいい・・。
でも・・・。
でも、残念ながら、実際は漫才コンビはできなかった。
「当たり前じゃない。『本』なんだもの。(かみさん談)」
こほん・・。
それは、そうだが、仮に2冊が人間だったとしても、できなかった
のだ。
「それも当たり前よ。
あなたの漫才、ぜんぜん、笑えないんだもん。(かみさん談)」
いや・・。
そういう意味じゃなくて・・・。
実は・・。
実は「コジにいちゃん」は行方不明だったのだ。
「えっ?
何よ、それ?
どういうこと?(かみさん談)」
現代人の僕らは「古事記」と「日本書紀」を知っている。
内容は知らなくても、名前だけは知っている。
なにせ、中学の歴史教科書に載っているほどの「大物」なのだ。
日本書紀は、完成後に何度も「講書」とよばれる学習会が、国家の
事業として開かれてきた。
「役人皆で日本書紀様をベンキョーするぞっ。」って感じだ。
大物としての扱いを受けてきたわけだ。
しかし、古事記の方は、そんな扱い、まったくなし。
ずうっと、ほったらかしにされてきた。
712年に元明(げんめい)天皇によって完成された古事記は、
極端に言えば、ずーっと行方不明みたいなものだったのだ。
これまた極端に言えば900年も・・・。
900年たった江戸時代。
古事記は江戸幕府によって「再発見・再認識」される。
もし江戸幕府が古事記を見つけなければ、
「古事記はなかった。」と言えるかもしれないのだ。
「うわあ、ひっどーい。
それじゃあ、コジちゃんがあまりにも可哀想よ。(かみさん談)」
うん。僕もそう思うなあ・・。
「でもさあ、前号でも話したことだけど・・。
元明天皇は、どうして、主役の『天武天皇』のことを古事記に載
せなかったのかしら。だから、忘れ去られたんじゃないかしら。」
うーん・・。
「元明さんにとって天武さんはおじさんでしょ。
しかも、壬申の乱に勝って天下をとり、歴史書を作ろうと言い出
した歴史に残る英雄よね。」
うん、そうだよね。
「普通さあ、おじさんが英雄だと鼻が高いよね。
石原大臣なんてさあ、裕次郎のこと、すっごく自慢してるじゃな
い。私が元明さんだったら絶対に天武おじさんのことを書くけど
なあ。
めいっことして当たり前のことよね。」
だよねえ・・。
「ね。そうでしょ。まるで、他人みたいよね。」
えっ?
「ホントに、元明さんって天武さんのめいっこなの?」
ああ、ちゃんとそう書いてあるんだ。
「書いてあるって何に?」
そりゃあ、日本書紀さ。
「ええっ!ショキちゃんに!
コジちゃんには?」
いや、だから、コジちゃんには天武さんも元明さんも出てこないっ
てば・・。
「ふーん。
なるほど!わかったわよ。
そっかー。
そうだったのか・・・。
これは、おもしろくなってきたわ。」
どうしたの?
「にぶいわねえ・・。
元明さんは天武さんのめいっこじゃなかったのよ。」
ええっ!?
(つづく)
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