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 第13章 「称徳(しょうとく)と道鏡(どうきょう)」
         (3)「宇佐神宮の秘密」
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「道鏡(どうきょう)を次の天皇にしなさい。
 そうすれば天下太平です。」

天皇家とは赤の他人のお坊さんを次期天皇にしろ、という大胆な
お告げ。

こんなお告げを出したのは、現在の大分県にある宇佐神宮
(うさ じんぐう)である。

時は769年、つまり奈良時代。
時の天皇は女帝「称徳(しょうとく)」

奈良時代は一言で言うと、
律令制度が整い、天皇の権力が歴史上おそらく最も強かった時期だ。

彼女の父、大仏を造った聖武(しょうむ)天皇は、それを宣言した
人でもある。

「天下の富をたもつ者は朕(ちん)なり。」
(世の中の富は、この聖武さまのものだよーん)

「天下の勢をたもつ者も朕なり。」
(天下の権力も、この聖武さまのものだよーん)

ね。すごい言葉でしょ。

そんな「天皇最強の時期」に、次の天皇を指名できた宇佐神宮。

指名です。指名。

こんな人を天皇にって感じで言ったんじゃなく、
道鏡さん、ご指名。

これって、ものすごいことでしょ。

細木数子だって、こうはいかない。

どう考えても、普通の神社とは思えないよね。

「宇佐神宮。あんたいったい何者なんだ?」
と、聞きたくなるのは僕だけではアルマジロ。

「うーん。
 あいかわらず、だめねえ。(かみさん談)」

・・・。

「私ならこう言うね。
 僕だけではアンモナイト。
 きゃはははは。(かみさん談)」

・・・。

こほん。

幸いにも宇佐神宮は隣町にある。

僕は、さっそく訪れてみた。

でかい、でかい。
驚くほどのでかさ。

調べてみたら、60ヘクタール。
ヘクタールなんて言われても、ピンとこないよね。

猫のひたいに換算すると、なんと1億2千万匹だ。

ゴジラ(注:松井選手ではなく、ほんもののゴジラ)のひたいなら
10万匹。

想像して欲しい。
10万匹のゴジラのひたいを。
ううむ、壮大だ。

とにかく。
44才の僕をもってして、とりいをくぐって、本殿に着くまでにへ
とへとに疲れさせてしまう大宮殿。

それが、宇佐神宮なのだ。

それもそのはず、日本全国の八幡宮(はちまんぐう)の親分だもん
ね。

八幡さまって、どこの地方にもあるでしょ。

その1位がこの宇佐神宮。

宇佐神宮は八幡一の神社なのだ。

ここにまつられている神さまは3人。

神功(じんぐう)皇后。
応神(おうじん)天皇。
比売大神(ヒメ おおかみ)だ。

神功(じんぐう)さんと応神(おうじん)さんは親子です。

母ちゃんの神功(じんぐう)さんはモーレツな人だった。

存命中の彼女は、旦那さん(もちろん天皇)と一緒に九州に攻めて
きた。

そこで、何を思ったか、海を見ながら、ついでに朝鮮にも攻め込も
うって提案したんだ。

かみさんが、ケーキのついでにパフェを注文するのとはわけが違う。

気持ちはいっしょかも知れないが、スケールも迷惑度もはるかに違
う。

九州に来たついでに朝鮮だもん。
しかも、観光旅行じゃない。
戦争だ。

当然、旦那さんは大反対。

すると・・。

ここで事件が起きる。

反対したとたんに、旦那さん急死しちゃうんだ。
ひえーって感じ。

なんとも、推理ドラマっぽい展開だが、とにかく、九州のついでに
朝鮮まで攻め込んだ女性だ。

ちなみに。
旦那さんの名前は仲哀(ちゅうあい)天皇。
なんか、哀しい響きがある。

応神天皇は、その息子さんだ。

母の血を引き、すごく戦争がうまかった。

で、後の世に源氏を中心とする武士の神さまとしてあがめられるん
だね。

でも・・・。

でも、そんなモーレツ親子と言えども、いくらなんでも次期天皇の
指名をできるほどの神さまとは思えない。

だからこそ、もう一人の神さまがまつられているのではないだろう
か。

もう一人。
親子水入らずに、入り込む神。
そう、「比売大神(ヒメ おおかみ)」だ。

よく見てほしい。

この人、神じゃない、大神なのだ。

神の中の神と位置づけられた超大物だ。

この大神さまがいったい誰なのか・・・?

次期天皇を名指しできるほどの、大神。

僕は、深く考えた。

座禅を組んで頭をぐりぐりしながら・・。

「あっ。一休さんね。がんばれっ!(かみさん談)」

ポクポクポク。

ヒントは3つある。

宇佐神宮は・・。

(1)八幡一の宮であること。

(2)中心となる神は、ヒメ大神と呼ばれていること。

(3)都から遠く離れた地、大分県、つまり、昔の呼び名で、
   豊(とよ)の国に造られた神社であること。

まず、(1)についてだ。

現代でこそ「八幡」と書いて「ハチマン」と読むが、当時もそうだ
ったのだろうか・・。

地名では、同じ「八幡」と書いて「ヤハタ」と読む。
ほら、あの「スペースワールド」っていう遊園地のあたりが、
「ヤハタ」だ。

ちなみに僕のじいちゃんは、「ヤバタ」と読んでいた。

多くの名前でそうだが、たとえば「橋」。

一字なら「はし」だけど、
「日本橋」と書けば、「にっぽんはし」ではない。
「にっぽんばし」とにごる。

だとすれば、「八幡」は「ヤバタ」が正しいのかも知れない。

ならば・・・。

「八幡一」は何と読むか・・。

これは、「ヤバタイチ」または「ヤバタイ」となる。

「うわっ。
 もしかして、邪馬台国(ヤマタイコク)?(かみさん談)」

むふふふふふ。

僕は、鼻の穴を広げ、やな笑いを浮かべた。

この笑いのために何人の友をなくしたか、わからない。

うううっ。

まあ、いいや。
僕は過去を振り返らない。

「じゃ、なぜ、歴史のメルマガ書いてんの?(かみさん談)」

こほん。

次に(2)の「ヒメ大神」についてだ。

ヒメと呼ばれ、神の中の神、つまり大神となる資格を持った女性は
誰か・・・。

「ここまでくれば、簡単よ。
 ヒミコね。
 ヤマタイだし・・。女だし。
 ヒメとヒミって、なんか、響きが似てるもん。(かみさん談)」

そう、実際に明治時代まで、歴史学会でもヒミコはヒメコと呼ばれ
ていたそうなんだ。
もちろん、今でも「ヒメコ」が正しいとする人もいる。

「へえ。
 すごいじゃない。
 宇佐神宮の秘密が、今、明らかになりつつあるのね。
 なんか、いつもの、あなたじゃないみたいよ。
 本当に一休さんがのりうつったみたい。(かみさん談)」

げげっ。
いけねっ。
一休さんのこと、すっかり忘れてた。

ポクポクポクポク。

よおし、いくぞお。
最後に、なむ(3)だあ。

「へっ?(かみさん談)」

こほん・・。
ごめん。

(3)の豊(とよ)の国についてだ。

これまた、興味深いことがある。

ヒミコのことを書き残してくれた「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」
に、ヒミコの後継者の名前が記されているんだ。

その名は、なんと・・・。

みなさん、びっくりする用意はできてますか?

いきます。

「ヒミコ」の後継者は、なんと「トヨ」なのだ。

チーン。

そう、ここまでそろえば、答えはひとつ。

宇佐神宮は、
日本の歴史上最高の呪術師、火を操る魔性の女性、鬼道に通じた
「ヒミコ」をまつるヤマタイゆかりの神社に違いない。

ひょっとするとヒミコの墓かもしれないぞ。

ヒミコの霊を守るために、神功(じんぐう)さんと応神(おうじん)
さんがまつられているのかも・・・。

だからこそ、朝廷も恐れ、かしこまり、次期の天皇問題にまで、口
出しを許さざるを得なかった。

ヒミコは、その死から500年後の日本を再び震え上がらせたのだ。

「かっこいい。
 ここで、またヒミコが出てくるなんて、
 歴史って最高っ。(かみさん談)」

では、なぜ、ヒミコは「道鏡を次期天皇に」と言ったのか。

いや、本当は言わなかったのか・・。

ここにこそ、日本の歴史、最大にして究極のミステリーがある。

そう思うのは・・。

「僕だけではアンモニア。(かみさん談)」

ナイス、フォロー。

次回もおつき合いあれ。

ではでは。



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