●まぐまぐ「アワード」。
メルマガを本にしてあげようというこのコンテストに『たの歴』
も立候補しました。
読者さんの投票コーナーもあり、ありがたいことに50名以上の
方が投票してくれました。
●予想もしなかったほど多くの得票数でした。
●ちらりと1位の得票を見ますと、なんと数千票。
●僕は、ますます嬉しくなりました。
●数千票も集めるメルマガが立候補したコンテストに『たの歴』が
参加できたこと。
そして、50名もの方が応援してくれたこと。
立候補してよかったなあ・・。
そう思いました。
●本当にありがとうございました。
なんか、うれしくて、染の助さんの傘回しのごとく、今日はいつ
もより長めに書いております。
●下記がそのHPです。
8月20日までやってます。
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/mag2books/vote.cgi?id=0000101138
●個人文集「ぽとり」も40票以上頂きました。
ありがとうございました。
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/mag2books/vote.cgi?id=0000119930
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【1】今回の発信
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下記の【登場人物一覧】と【資料】を今回の発信の参考にして下さ
い。
【登場人物一覧】
●ヒャーヤッコ・ホークス:
冷ややっこ好きのダイエーファン。
町内会副会長。
探偵事務所を開き、数々の事件を迷宮入りさせてきた。
●ハトソン
ホークス事務所の助手。
中年のおばさん。
子どもの頃、伝書鳩に逃げられた経験があり、以来ハトソンと
名乗る。漢字で書けば「鳩損」ね。
それ以外はすべて不明。
●理容「ほしの」のおやじ
町内会会長。
ホークスが好んで通う散髪屋。
話好き。歴史好き。推理好き。
●かみさん
僕のかみさん。
●はいつ
僕。
*登場人物について、詳しく知りたい方は、バックナンバー27
「タランチュラの事件簿」をご覧下さい。↓
http://village.infoweb.ne.jp/%7efwkh8072/deko/his/27.htm
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【資料】●「ほしの」のおやじがまとめたメモ
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『道鏡事件の流れ。
(1)お坊さんの道鏡が称徳(しょうとく)女帝の病気を治す。
(2)法王にまで登りつめる道鏡。
(3)宇佐神宮から道鏡を天皇にしなさいとお告げ。
(4)称徳(しょうとく)女帝が、お告げが本当かどうか確かめ
ることを決定。
(5)宇佐神宮へ和気清麻呂(わけの きよまろ)を遣わす。
(6)和気清麻呂(わけのきよまろ)が持って帰ったお告げは、
道鏡を天皇にしてはならないというものだった。
(7)怒った称徳(しょうとく)が和気清麻呂(わけのきよまろ)
を罰する。
(8)次の年、称徳(しょうとく)が亡くなり道鏡も没落。
(9)さらに2年後、道鏡死す。』
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第13章 「称徳(しょうとく)と道鏡(どうきょう)」
(6)「ホークス事務所の挑戦(下)」
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「♪ぴいいん・ほおん♪」
電池の切れかかったチャイムは、もの悲しい。
今考えれば、この音はこれから始まる地獄絵巻のゴングだったのだ。
「はあい。今、いきますよお。」
玄関に出てみると、そこに1組の男女が立っていた。
「あっ。
ホークスさんにハトソンさん。
ありゃりゃ。
頭、どうしたの?
包帯ぐるぐる巻いちゃって。
あれ、鼻血?
事故にでもあったんですか?」
僕の声に、ホークスさんが明らかにうろたえた。
「ほ・ほ・ホークス?
ふー?
ふーいず、ホークス。
私は、謎のイラク人あるね。
こちらは、ミーのサイフ・・・。
のんのんのん、ミステーク。
ミーのワイフ。
謎のアメリカ人あるね。
仲良しあるね。
変装しないね。
のんのんのん、ミステーク。
戦争しないね。」
げげっ。
イラク人だって。
いったい何を考えているのやら・・。
あっ。
頭の包帯、ターバンのつもりだったのか。
じゃ、鼻血じゃないんだ。
鼻ひげのつもりで描いたんだ・・・。
僕はすがるようにハトソンさんに目をやった。
ああ、だめだ・・。
彼女も金髪かつらにサングラスなんだもん。
急いで目をそらしたが遅かった。
トムソンガゼル(なんか鹿みたいな動物)に襲いかかるチーター
(この場合、水前寺清子ではない。普通のチーター。)のように彼
女は語った。
「オマイリー・オマイリー。」
へっ?
「お盆は、お参り。
警官、おまわり。
お花はひまわり。
じいさん、まきわり。
納豆、ひきわり。」
こ、この人もか・・。
大の大人が二人そろって、何のつもりなんだろうか・・・。
ぞぞぞ。
まあ、とにかく、この場は笑った方がよさそうだ。
「あははは。かゆいかゆい。
いや、ゆかいゆかい。
と、とにかく。
お・お参りですね。まあ、どぞどぞ。」
怖くなった僕は2人にあがってもらった。
・・・。
ちーん。ちーん。ちーん。
「なんたらこーたら、なんたらこーたら。」
ちーん。ちーん。ちーん。
仏壇の鐘をたたき、奇妙な念仏をうなりあげる二人の背中を見なが
ら、かみさんが耳打ちした。
「ねえ、ねえ。
いったい、どうしたのかしら。
暑さのせい?」
「しっ。聞こえるよ。」
ちーん!
やけに大きな鐘の音。
その瞬間、二人が急激に振り返った。
「ぎょえーっ。」
僕とかみさんはすってんころりとひっくり返った。
ハトソンさんが口を開く。
「ソーリー、ソーリー。
オマイリー・オマイリー。」
また、それかっ!
いや・・。少し違った。
「お盆はお参り。
警官、おまわり。
二人はおかえり。
・・・。
では、ばーいなら。」
「ば、ばーいならって・・・。
いったい、ねらいは何なんです?」
勇気あるかみさんの質問に二人が急に立ち上がった。
ぎゃーっ。
なんか、大魔人の逆襲みたいな仁王(におう)立ちだ。
「ひえー。
ごごご・ごめんなさいっ。
お許し下さい。
なまんだーぶ。なまんだぶ。」
僕らは必死に手を合わせた。
手の平に汗がにじんでいた。
嵐は去った。
ちーん。
二人は、謎の笑いを残し、鐘を一つ鳴らして帰っていったのだ。
チャイムで始まった地獄絵巻は鐘の音で終わりを告げた。
ふと見ると、仏壇の横に香典袋が残されていた。
「開ける?」
かみさんの声がゆれた。
「警察、呼ぼうか・・。」
すでに半泣きだ、僕。
ジャンケンの結果、僕が開けることになってしまった。
ほっ。
ただの手紙だ。
あとは、不幸の手紙じゃないことを祈るのみ・・。
えーと・・・なになに・・。
**************************************************
拝啓 はいつ夫妻。
暑中お見舞い申し上げます。
ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。
驚いたかね。
あの謎のイラク人は、何を隠そう・・・。
私、ヒャーヤッコ・ホークスの変装だったのだよ。
いや、このホークス自身の生まれ変わりだったかも・・。
むひひひ。
ここ、キーワードね。
**************************************************
あきれた・・。
あれで、バレないつもりだったのか・・。
ウサギとかけっこしたカメより楽天的だ。
でも、なんだ?キーワードって・・。
まあ、いいや。
僕は続けて読みあげた。
**************************************************
ご依頼の道鏡事件の調査についてご報告申し上げます。
まず、同封の資料に目を通してくれたまえ。
断っておく。
資料のこ汚い字は『理容ほしの』のおやじによるものだ。
そんな字を書く男が、わが誇りある上山町(かみやままち)の町
内会長だと思うと泣けてくる。いや、腹が立つ。
そっこく首だ。リスザル、いや、リストラだ。
で、まあ、次期会長選挙は、ぜひ、このホークスに。
そうそう、金物屋の吉田も狙ってるらしいぞ。
しかし、あいつは金物屋だけに子どもの頃から頭が固い。
あんなやつを選んでしまったら、下山町(しもやままち)の連中
と戦争でもおっぱじめかねないぞ。
**************************************************
さっきの変装につづき、この手紙・・。
人間はここまで短絡的で差別的になれるのだろうか。
ぜったい投票してはいけない人物なり。ホークス。
とにもかくにも僕らは資料を読んだ。
「それにしても、なかなか本題に入らないわねえ。
あなたの『たの歴』と一緒ね。
これじゃあ、人気も出ないはずよね。」
かみさんが、ため息混じりに言った。
ふんっ。
ため息をつきたいのは僕の方だ。
**************************************************
さて、はいつさん。
かんじんの道鏡事件です。
ふつうのどどど素人はこう考えます。
犯人は道鏡だ。
天皇の位を狙ったに違いない。
また、少しひねってこう考えるかも知れませんな。
犯人は道鏡と称徳の二人だ。
二人の愛の暴走が事件を巻き起こしたのだ。と。
どどど素人にしては、よくできた推理です。
しかしですな。
この推理は欠陥を持っています。
どう考えても、
【資料】の(4)と矛盾してしまうのです。
ウソついた本人がウソかどうか確かめるわけないし、
ウソついた人は確かめられるのをなんとか阻止しようとするはず
だもんね。
まあ、詳しくは【たの歴No.58】をご覧下され。
うぷぷぷぷ。
さあ、ここでいよいよ、プロフェッショナル探偵、
私、ヒャーヤッコ・ホークスの出番ですな。
ひとこと言っておきましょう。
このホークス。自慢はきらいですがね。
最後まで読んだ推理小説で、犯人をはずしたことがないのです。
今までの人生で一度もない。
むふふふふ。
**************************************************
・・・。
「最後まで読んだら、だれでもわかるんじゃないの?」
かみさんがつぶやいた。
うーむ。
すごいぞ、かみさん。その通りだ。
**************************************************
さて、はいつ君。
思い出して頂きたい。
称徳(しょうとく)女帝のおやじさんのことだ。
大仏の聖武(しょうむ)天皇だよーん。
**************************************************
ありゃ。
だよーん・・・だって。
なんか急にフレンドリー。
「人ってさ。
自慢した後にだけ優しくなれる動物なの。
イヤね、自慢って。」
かみさんがしたり顔で語る。
しっかり自慢してるじゃないか。
**************************************************
覚えてるかなあ・・。
はいつ君も、【たの歴】に書いてたじゃん。
No50の【水と油】でね。
聖武さんは
「開墾した土地を開墾した人の物にしていい。」っていうきまりを
作ったよね。
法令の名は、
【墾田永年私財法(こんでん えいねん しざいほう)】。
あれでさあ、もともと財力を持っていた貴族達の土地がバンバン
増えていっちゃったよね。
中でも、藤原一族は、ウハウハだった。
**************************************************
そうそう。そうだよね。
**************************************************
つまりさ。
墾田永年私財法(こんでん えいねん しざいほう)は藤原氏の
繁栄を保証する法律だったわけ。
なのに、なのに、なにぬねの。
**************************************************
かみさんが、にらんだ。
「あなたさあ、ふざけて読んでない?」
「いや、ホントにそう書いてあるんだってば。」
僕は続けた。
**************************************************
娘の称徳さんは、道鏡と組んで、その法律をなくそうとしたんだ。
ようするに、強烈な構造改革だね。
さあ、困った、藤原氏。
でも、手をこまねいているような一族ではない。
なにせ、大化改新以来、ずっと政治の中枢にいた一族だもん。
すさまじい政治対立が起こったはずです。
**************************************************
「へえ。
そんなことがあったんだ。知らなかったわ。」
「だよねえ。よく調べたなあ、ハトソンさん。」
**************************************************
断っておく。
これは、ハトソンが調べたのではない。
このホークスが調べさせたのだ。
**************************************************
「やっぱり、ハトソンさんが調べたのね。」
**************************************************
さあさあ、始まった、藤原一族 VS 称徳・道鏡。
なんとしても、称徳・道鏡コンビを倒さねばならぬ藤原氏。
しかし、相手は天皇と法王の強力コンビだ。
ガメラとゴジラが手を組んだようなもの。
真っ正面からは太刀打ちできない。
こうなれば、策略しかない。
**************************************************
うんうん。納得だ。
なんか、すごい展開になってきたぞ。
**************************************************
さあさあ、お立ち会い。
そこで、藤原、考えた。
道鏡を「天皇位」を狙う謀反人(むほんにん)に仕立てよう。
それには、道鏡を、その気にさせることだ。
はて・・。
いかにして、ヤツをその気にさせるか・・・。
ううむ。
難しい問題じゃ。
頭を抱えた藤原氏。
・・・。
かなりの時間が経ち、夕闇が迫ろうとしていた。
カーカー。
1羽のカラスが鳴いた。
むう。
山へ帰るのか、カラスよ。
このわしに夕刻を告げてくれたのじゃな・・。
むっ。告げる・・・。
そ、そうじゃ。
お告げじゃ。
お告げを使うのじゃ。
宇佐の神宮さまのお告げが最適じゃ。
「道鏡を天皇に」というお告げを作り上げるのじゃ・・・。
道鏡のヤツ、きっとその気になるに違いないぞ。
その上で、お告げが偽物だったことをバラせば、よい。
これでヤツは皇位を狙う極悪の謀反人じゃ。
ぐはははははは。
道鏡・・・。この藤原にたてつくとはバカな坊主よのお。
ぐははははははははは。
**************************************************
「いつの間にかドラマチックになってきたわねえ。」
「うん。手紙じゃないみたい。」
「けどさ。すごい推理よね。
なるほど・・。そっかー。
藤原氏が仕組んだワナだったのね・・。」
**************************************************
とまあ、こんな推理もできますわな。
納得でしょ。キタジマ。
**************************************************
「キタジマ?
キタジマってだれ?」
「さあ・・・。」
ごくり。
僕らはつばを飲み込んだ。
真犯人かも・・・。
なんか背筋が冷たくなった。
**************************************************
いけっ。いけっ。キタジマ。
ふれっ、ふれっ。キタジマ。
エイエイオー!
**************************************************
なんだこれ?
ここから手紙の字が変わった。
**************************************************
ごめんなさい。はいつさん。
今、テレビが始まっちゃったの。アテネの水泳。
ホークス、興奮しちゃって。
北島選手に応援ファックス送るって・・・。
もう、何がなんだかわからなくなってしまったみたい。
続きは私が書きます。
**************************************************
おおっ。
ハトソンさんだよ。
なんか、光が見えた気がした。
**************************************************
実は、この藤原一族犯人説も欠陥があるのです。
それは、やはり【資料】の(4)。
称徳さんがお告げの真偽を確かめようと決定したことです。
これは、あくまで称徳さんの決定です。
つまり、真偽を確かめるかどうかは称徳さん次第だったのです。
最初のお告げを元に、道鏡さんを天皇にする可能性だってあった
わけです。
そうなれば、藤原氏は壊滅的な打撃を受けます。
こんな危険をおかすでしょうか。
探偵学的に言えば、ありえません。
犯人は、道鏡でもない。
道鏡・称徳の共犯でもない。
そして、藤原氏でもない・・・。
犯人のない事件・・・。そんなものがあるのでしょうか。
ホークス事務所は壁にぶち当たりました。
私たちは【資料】をもう一度見直しました。
原点に戻るためです。
そして、【資料】の中に、ある矛盾点を見つけたのです。
それは、(6)と(7)。
「道鏡を天皇にしてはいけない。」という新しいお告げを持って
帰った和気清麻呂(わけの きよまろ)さんが、称徳さんから罰
せられたことです。
清麻呂(きよまろ)さんはお告げを伝えるだけの役割です。
たしかに大切な仕事ではあるけれど、お告げを出した本人ではな
い。
伝えるだけの伝言係なのです。
なぜ、その伝言係が罰せられなければならなかったのか・・・。
普通に考えれば、おかしいですよね。
律令という法律が整備された奈良時代。
天皇の感情だけで、罰することができたでしょうか?
そんなことをすれば、不審がうずまき、国の体制がくずれます。
だとすれば、そこに何らかの罰するに値する理由があったはずで
す。
私たちは、そこから見直したのです。
どうでしょう・・・。マツザカ。
**************************************************
げげっ。
まずいぞ。
**************************************************
いけえ、いけえ。
マツザカ、いけえ。
キューバなんかに負けるなあ。
行くんだマツザカーーーー。
**************************************************
・・・・。
やっぱり・・。
オリンピックは『たの歴』最大の敵である。
「スマッシュ、スマッシュ。愛ちゃん。(かみさん談)」
ほら・・・ね。
(「下の下」につづく)
**************************
夏休み中は短期集中発信となります。
近日発信の次号にもおつき合いあれ。
オリンピック中に出るのか『たの歴』。
今度こそ核心に迫るかも。
ではでは。