こんにちは。川瀬です。
ユダヤ・キリスト・イスラムの三つの宗教の関係につ
いてとてもわかりやすく説明されており、関心しまし
た。
ただ宗教戦争の部分については説明不足で、誤解を招
きます。
十字軍は、キリスト教の聖地であるエルサレムを異教
徒のイスラムから奪い返すという形をとってはいます
が、その背景というか、そのような大規模な軍事作戦を
西ヨーロッパが取った理由は、きわめて経済的なもので
す。最も大きな理由は西ヨーロッパが人口が増えすぎ
て、増えた分を養えなくなっていた。西ヨーロッパでは
従来もこの問題をどう解決していたかというと、周辺地
域に人を送って開拓させて新たな土地を開いて増えた分
の人口を養ってきました(開拓といっても無人の荒野を
開墾するのではなく、異民族の土地を奪うことです
が)。この時も「東方十字軍」という形をとっていまし
た。東ヨーロッパやロシアはこうやってできた国々で
す。11世紀の十字軍の時は、東南に広がる、ビザンチ
ン帝国とその東に広がるイスラム帝国がその「開拓」の
対象になりました。
もう一つエルサレムを目差した理由は、エルサレムな
どのパレスチナの地方が東西貿易の要衝だったことで
す。西ヨーロッパが必要としている小麦や綿などは、こ
の貿易路を通じて、エジプトから運ばれていました。そ
して絹は中国から、さらに香辛料はエジプトやエチオピ
アやインドから。この貿易の主導権はビザンチン帝国と
イスラム帝国が握っていました。この主導権を取りたい
と願ったのが、イタリアの商業都市国家のベネチアや
ジェノバでした。この町の貴族=大商人たちは、ローマ
教皇をたきつけて、聖地回復という名目で、西ヨーロッ
パ中の国王や諸侯・騎士たちを動員して十字軍を始めさ
せたのです(だから十字軍に反対してイスラムとのエル
サレム共同管理を推進した当時の神聖ローマ皇帝がロー
マ教皇から破門され、その本国であるシチリア島が十字
軍に攻撃されたことが、先日のNHK特集で報道されてい
ました)。
だから十字軍はほとんど略奪戦争。占領されたイスラ
ムの町町では人々が何万人も虐殺され、品々や土地や人
間が略奪されました。そして酷いもので、異教徒ではな
く同じキリスト教徒(もっともローマカトリックではな
く、ギリシャ正教ですが)のビザンチン帝国を攻め、そ
の首都であるコンスタンチノープル(当時の名前はビザ
ンチウム)を陥落させ、略奪と大量殺人が行われてもい
ます。
十字軍は宗教戦争の形をとっていますが、実際は経済
の主導権をとるための略奪戦争です。(宗教戦争はすべ
て形だけです)
イスラムとユダヤの戦い、いわゆるパレスチナ戦争も
そうですね。イスラムのアラブの人々が統一され、しか
も諸国民が政治的な主権を行使できる民主的な国家にな
ることを妨げるために、イギリスとアメリカの共同作業
で、イスラムの敵として作られたのが今のイスラエル。
イスラエルとの戦争が第1課題になったために、アラブ
・イスラムの国は、ほとんどが国民主権をとらない王政
の独裁政治(この典型がサウジアラビアです)です。
このときイギリスとアメリカが守ろうとした利益は、
言わずと知れた石油の利権ですね。
今のイスラムとキリスト(アメリカ)の戦いも宗教戦
争とか民主主義のための戦争といっていますが、問題は
経済的覇権の問題です。
宗教はお互い教えや戒律が違っていても共存可能です
からね。共存を拒否させる背景は、いつも経済的な利権
です。(ある宗教から新たな宗教が生まれる時も、その
背景は経済的利権であることが多いですね。これは、ユ
ダヤからキリストが、そしてキリスト世界からイスラム
が生まれたときもそうです。)
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川瀬健一[kenichi kawase]
URL http://www4.plala.or.jp/kawa-k/
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