今回はショートストーリーです。
小学校高学年の子どもたちに作ったお話しです。

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宇宙のうわさ
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「あそこのお子さん、困るのよね。
 うちまでやってきてね。
 勝手にゴミを捨てようとしてるんだから。
 いくら、お隣だからって言ってもね。
 ひどすぎるわ。」

「そうそう。
 暴れん坊でね。
 もう手に負えないみたい。
 けんかが絶えないしね。
 あれほど美しかったお母さんがさ。
 すすけちゃってさ、おまけに、熱まで出しちゃって・・。
 親不孝者のお手本みたいなものね。」

「そう、そう。
 ホントに困り者だよね。
 断りもなしに、うちにもやってきてね。
 うちが寒いからって、言ってね。
 かってに暖める計画まで立ててるんだから。
 いつの日かね。
 ぼろぼろになった母親を捨てて、うちに家出してくるつもりらし
 いの。」

「まったく困ったものよね。
 何様のつもりかしら・・。」

「ご近所の迷惑者よね。」

「そうそう、迷惑者。
 あっ。
 しーっ。
 来たわよ、来たわよ。
 ほら、あそこ。
 お母さんがやってきたわ。」

暗い暗い宇宙のむこうから、お母さんはやってきました。

自信なさそうにうつむき加減でやってきました。

だれかが言ったとおり、その顔はひどく汚れ、宇宙一キレイだと
言われた昔の面影はありませんでした。
病気なのか、体中から膿や熱を出しています。

彼女は母なる地球でした。

「ごめんなさい、みなさん。
 うちの子が大変ご迷惑をお掛けしているようで・・。」

地球は申し訳なさそうに続けます。

「もう少し、もう少しだけ待って下さい。
 ああ見えても、本当は親孝行な子達なんです。
 今に、今に、きっと・・。」

そう言うと言葉をなくしました。

月も金星も火星も黙り込んでしまいました。

宇宙のうわさ話が終わる日はくるのでしょうか。

おわり。



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