内なる3点セット」-2000/03/02-

ある国会議員が国会で質問していました。
その質問の中で次のような話を紹介しました。

「ハーバード大学の教授が日本と中国の留学生を比べて言ったそうです。
 日本の学生は基礎学力の点において中国に負けている。
 一人の人間としても,話をしていて面白みがない。
 中国の学生は面白みがある。」

そして、続けたのです。
その主旨はこうでした。

「このままでは中国に負けてしまう。
 追いつき追いこせではなく、世界をリードする日本でなくてはならない。
 日本も英才教育を推進すべきだ。」

国会議員が自分の信念に基づいて意見を述べること、これは重要な使命です。
だから、この議員がどんな考えを主張しようとも、それは自由です。

そして、僕たちは主権者として、その意見に対して自分なりの考えを持たねばなりません。
特に教育に関することは選挙権を持たない子ども達のために、しっかり見つめねばなりません。

僕はこの議員の発言にあ然としました。

まず、なぜ、ハーバード大学の教授のいうことが正しいと仮定できたのでしょうか。
これは、この議員がハーバード大学という名前にブランドを感じたからに他なりません。
「あのハーバード大学の教授が言うんだから間違いない。」と思いこんでいるんですね。

そして、この教授は何をもって「日本の学生は人間として面白みがない。」と言ったのでしょうか。
そもそも、ある人間が他の人間のことを面白みがあるとか、ないなどと評価できるのでしょうか。
たとえば、2人の人間がいたとします。
1人は控えめで謙虚な人、もう一人は、積極的で自己を主張する人です。
どちらか一方が、面白みがあり、面白みがないなどと、誰が判定できるのでしょうか。
そんな判定はできるはずがないし、されては迷惑な話です。

最後は外国に負けてしまうぞという恐れからの発言です。
結局、基準は外国という他者にあるわけです。
なぜ中国と比べられなければならないのでしょうか。
逆に中国の良さがあるなら、それを認め、協力していくのが政治家の役目ではないですか。

この議員の発言はブランド主義・相対評価主義・競争主義の3点セットだと思います。
そして、このような発言が国会で行われるということは僕らの内に3点セットがあるからですよね。

学歴を求め、○○よりいいか悪いかの相対評価をもとに競争に望む。
悲しい3点セットの中で立ち往生している子どもがたくさんいます。
僕たちは、内に目を向けることから外を変えていく必要がありそうです。
少なくとも、内を変えることができれば、外を見る目が変わるはずです。
それは子どもを見る目が変わるということに他なりません。
すると、子ども自身の目が生き生きと変わってくる、そう思います。

【追伸】
たしかに、3点セットの中から出てきた英才、天才もたくさんいるでしょう。
けれども、、。
人類史上最高の天才とも言われるアインシュタインは学業成績のパッとしない子どもでした。
彼が相対性理論を構築したのは大人になって特許局に勤めている時でした。
それは1900年に入ってすぐのこと、日本がまだ日露戦争を戦っている頃なのです。
彼は3点セットとは無縁の環境で出てきた天才なのです。



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