「ペットボトルのクリスマス」

 12月になると街はクリスマスの雰囲気に包まれます。

 昨年の今頃です。
僕が住んでいる市の市役所もクリスマスの彩りに包まれました。
何と市役所のロビーに大きなクリスマスツリーが出現したのです。
高さは5メートル以上です。たくさんの飾りがついたきらびやかなものです。
ただ、普通のクリスマスの飾りと違っている点がありました。
それはその材料の主役がペットボトルだったことです。
いわゆるリサイクル啓蒙のクリスマスツリーだったのです。
大きさ、派手さ、見ているこちらが圧倒されてしまいました。
作った職員さんは大変なご苦労だったと思います。

 ペットボトルはおもちゃのロケットの材料にしたり、シャツの素材にしたり、リサイクルの広告塔です。
ペットボトルのロケット見たことありますか?
すごいですよ、何十メートルもピューって飛んじゃうんです。
初めて見たとき本当にびっくりしました。

 クリスマスの飾りもロケットもシャツも確かに再利用ですよね。
捨てちゃうペットボトルが利用されているわけですから。
では「リサイクル」でしょうか?
僕は残念だけれど肝心のサイクル(輪)には乗っていないと思うんです。
まさにロケットのように飛んで行っちゃって、戻ってこないと思うんです。
どんなに形を変えて、飾ろうとも飛ばそうとも着ようともペットボトルの生産量は減少しません。
今日も明日もどんどんペットボトルは作られていきます。
結局、ペットボトルのための資源はあいかわらず消費されていくってことですよね。
これが、リサイクルなんでしょうか?
ごみだって全然減りません。
だって飾りもロケットもシャツも最後はゴミになってしまいますから。

 僕の娘が工作の時間に牛乳パックを使った人形を作ってきました。
そして「リサイクル工作だよ。」って言うんです。
同様に知人の娘さんは牛乳パックで和紙を作ってきました。
やはり「リサイクル教室」で習ったものでした。

 これも何かが違うと思うんです。
たしかにポイッと捨ててしまわずに何かに再利用する、ということはとても大切です。
その大切さは学校や家庭、社会で教えるべきですよね。
そして、その活動をいろんな場所で実践されている方はすばらしいと思います。
しかし、それを「リサイクル」と呼んでいいものでしょうか。
大切ではあるが「リサイクル」ではないよ、と教えるべきだと思うんです。

 子ども達は再利用の名人です。
壊れた家具の板や棒でお人形を作ります。
捨ててあった段ボールで車を作ります。
広告紙で紙飛行機を作ります。
でも、これも「リサイクル」とは言えないですよね。

しかもペットボトルのロケットは広告紙の紙飛行機に、かないません。
だって紙飛行機は他の材料を必要としませんから。

ということは、大人は子どもにかなわないことを必死でやっている。
見た目で言えばロケットはすごいですよ、奇抜なアイデアです。
けれども、たとえペットボトルから本物のスペースシャトルを作ったとしても紙飛行機にかなわないです。
そして、その紙飛行機でさえ「リサイクル」ではない。

 家庭や学校では再利用の大切さを教えながらも「リサイクル」の難しさを教えなければなりません。
洗えば何回も使えるビンをやめちゃったことが、地球に優しいはずがないと教えるべきですよね。
そうしないと「リサイクル」がエンターテイメントの世界にどんどん入っていくように思うんです。

今年もペットボトルのクリスマスツリーが登場するんでしょうか、、。



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