教育バブル(2)」-2000/2/8-

「総理大臣と最高裁の裁判長と国会の議長の給料比べはどうです?」
教員同士の研修会で川田先生が言いました。
僕たちは社会科の「三権分立」をどのような窓口から授業を組み立てるのかの話し合いをしていました。
「ほう、それもおもしろそうだなあ。」とみんな興味を持ちました。
「で、どうなの、誰が高いの?」と僕が言いました。
「あれ、先生、知らないんですか?」と川田先生。
「ああ、考えたこともなかったなあ。」
「一緒ですよ、一緒です。じゃないと三権分立とは言えないでしょう。」
「ああ、そうか!そうだよね。よく考えたらそうだよね。」

僕は納得しました。
日本は資本主義を選択し、その上で国家は成り立っています。
資本主義は、とにかくすべての価値を金銭で表していくことを可能にしました。

台風の被害は■億円、タイガース優勝の経済効果は■億円、自分の生命保険■万円。
そんなふうに、悲劇も、喜びも、命さえも金額がついてしまうのです。

だから、日本の最高権力である行政、司法、立法の長たちの給料は同じでなければならないのですね。
もし誰かが高ければ、それはその権力が強いことを表してしまうわけです。
つまり、資本主義的に見れば権力の均衡が壊れることを意味するわけです。

ある有名プロ野球選手が契約更改で■億円を手にすることになったのです。
この金額は、日本の最高権力者をはるかに上回る金額でした。
もちろん資本主義はこのことをも是とします。
けれど、僕はやはり何かおかしいと思います。
僕たちの生命や日本の将来、つまり子ども達の世代の生活までの責任を担う三権の長なのです。
その最高権力者の給料が他の日本人の給料より低いのです。

僕たちは最高権力者に最高の責任を求めます。
ならば、その給料は日本最高であってもいいと思うんです。
逆に言えば、それ以上の給料をその他の人間には払わない、これがいいと思うんです。

日本の法律は最低賃金を決めています。
では、最高賃金があってもいいのではないでしょうか。
そして、それは、僕たちの欲望の抑止力になるかもしれません。

実はそのプロ野球選手がインタビューに答えて、こういったんです。
「また来年さらに上の年俸を狙います。
 そして、それは僕だけのためではなく、野球を志す少年たちに夢を与えると思います。」

今や、少年の夢も金額になってしまおうとしています。
それが、マスコミを通じて全国に流れるのです。
その影響ははかりしれないものがあります。

最高賃金を決める、こんなことは現在は暴論かもしれません。
しかし上限がないということはバブルを意味しませんか?

僕らの世代は、バブルをしっています。
経済においても教育においても、それは大きな爪あとを残しました。

僕らは世代の使命として、欲望の歯止めを考えるべきだと思います。
そして、次世代に金額に換算できない夢を与えることが教育だと思います。



ご意見ご批判は今すぐメール
あなたのご意見などはHPやメールマガジンにて紹介する場合があります。
その際はすべて匿名とします。counter

ホームへ       語句別索引へ