学校の図書館の担当になって今年で5年目。放課後会議などなく、授業の準備で追
われていないときには、2時間ほど図書室で仕事をする(もっとも週に1回ぐらいし
かできないが)。また学期の終わりの3者面談の時期には担任のない私は午後の6時
間ほどを毎日図書館で過ごす。
図書館で仕事をしていると(本の修理や登録・廃棄作業など)、生徒たちの会話が
自然に耳に入ってくる。中には直接声をかけてきて、あれこれ世間話をしたり、中に
はさまざまな教科の学習について質問してくる生徒もいる。
放課後の図書館は、本を読みに来る生徒、宿題やレポートなどをやりに来る生徒が
ひっきりなしに訪れる。
先日の3者面談期間中の会話を少し。
1.3年生から
生徒: 「美術のポスターのアイデアスケッチを書いているんだけど、なんかいい
ものない?。」
私:「なんのポスター?。」
生徒:「文化財愛護のポスターなの?。」
私:「そりゃ大変だ。環境保護ならピンと来るけど文化財なんて考えた事ないで
しょ?。」
生徒:「うん。そう。なんかない?。」
結局いろいろ話しているうちに「壊されている文化財」をつかって見ることにな
り、カンボジアのアンコールワットの観音像やエジプトのスフインクスの話しなどを
紹介・・・・最後に、抱きつかれて指を折られた京都の太秦広隆寺の観音菩薩像の話
しをしたら彼女の目は俄然輝き、写真集をみてアイデアが浮かんだ模様。指を折られ
た観音像の顔と手を白黒でアップに描き、観音様の涙だけをピンクで描くとのこと。
悩んで暗くなっていた顔が明るく輝いていた。
あとで聞いた美術の担任の一言。「一人一人にじっくりとアイデアが生まれるよう
な話しをしてやる時間がなくて・・・・・」。
2.クラス新聞を書いていた1年生
生徒:「見出しの文字をもっと目立たせることできないかな?。」
私:「君はどんなことを考えていたの?。」
生徒:「他の学校の市のコンクール入選作品を見ていると、すごく文字にこってい
て飾りが多いの。でもかえってごちゃごちゃして見にくいので、もっとシンプルでイ
ンパクトの強いのないかなって考えたんだけど?。」
私:「丸ゴシック体で真っ黒の文字にするとか、もしくは同じ書体で白抜きにして
かなり大きな陰をつけるとか、三角や四角の黒い影をつけるなんかいいんじゃない。
白と黒のコントラストが一番強烈だよ。」
生徒:「ほんとの新聞みたいだね。見出しは記事の内容を印象付けるためにあるん
だから・・・そうするよ。」
とまあごちゃごちゃやっているところへ3者面談を終えた担任が登場。見出しの書
き方はきまったのであとは記事の内容の検討を始める。・・・6月の校外学習・同じ
く6月の合唱コンクール。そして9月の体育祭と10月の文化祭の準備が進行する中
での新聞コンクールはとても大変。なにしろ中心になって動ける人は限られており、
彼女はいつも何役も兼ねていて疲れているみたい。最後は担任に愚痴やらなにやらを
きいてもらっていた。
あとで担任に聞いた一言。「私も忙しくてじっくり相談に乗ってやる時間もなくて
・・・・。」。この日は6時の最終下校・閉館時間を大幅に過ぎて6時半閉館。約1
時間は、担任と生徒の二人だけ。まるで、相談室になっていた。
3.本を読んでいた1年生と
生徒:「あーあ、明日はやだな。」
私:「なにがやなの?。」
生徒:「終業式の校長の長い話し。いつも途中で眠く成っちゃうの?。」(まわり
であいづち)
私:「あきちゃうわけだ。」
生徒:「そう。3つも4つも関係ない話しをするし、長いし、バラバラ。」
私:「そう言うときは話している人の癖とかを見つけて数えていたら面白いよ。そ
れに話しているほうにはわからないし、真剣に聞いていると思われるし。」
生徒:「先生。ほんとのこと言っちゃっていいのかな?。・・・でもあるある。癖
が。話しながら体の向きを変えるんだよね。よーし数えよう。」
なぜかここにいると、御互いに素直になれる。すぐ本音で話してしまう。
図書館にいるといろんなおしゃべりができる。「図書館にいると落ち着くんだよ
ね」と生徒も言っている。でもそれは私も同じ。私の学校の図書館にはいつも音楽が
流れ、壁や柱には花の写真や浮世絵が飾ってある。
(了)
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【3】編集人ひとこと
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■教育改革国民会議では、「小中学校に奉仕の義務」を位置づけ
るよう提案したのだそうです。
「奉仕」って「義務」にしたら、その時点で「奉仕」じゃなく
なってしまうんじゃないかなあ。
僕はそう思います。
小中には9年間という長い教育期間があります。
あせらずに内面からの熟成を目指してほしいと願っています。
みなさんの考えも教えて下さい。
(参考記事:GKS news letter 7/27)