僕がまだ子どもだった頃のことです。
我が家には「東を向いて笑う」という一風変わった慣習がありました。
その年穫れた「お初ものの食材」は、いただく前に家族みんなで「東を向いて笑う」
のです。
みなさんの所にも、こんな「しきたり」がありますか?
僕は九州生まれの九州育ちですが、母は四国の生まれなのです。
だから、ひょっとすると、母の里の方の「しきたり」だったのかもしれません。
そこらへんは少しあいまいです。
そうですねえ、今の季節だったら、初物で「さつまいも」などが出てきますよね。
すると母がみそ汁の具に使ったりするわけです。
そして、こう言うわけです。
「さあ、今年初のおさつや。
東を向いて!!
大きな声でに笑いなさい!!」
家族で「わはははは」と笑うわけです。
毎年、毎年、繰り返されてきた「我が家のしきたり」だったのです。
そうすれば、また来年も健康でおさつが食べられるってことなのだそうです。
そのしきたりが原因で我が家ではちょっとしたトラブルがおきました。
それは、僕がたぶん小学校5年くらいの時だったと思います。
食卓にはお初ものの「カボチャの煮物」が並んでいたのです。
その時は、僕と母の二人だけの食事でした。
母がいつものように言いました。
「お初もののカボチャや。
東を向いて、笑うぞ!!」
でも、僕はいつものようには笑いませんでした。
「おかあちゃん、こんなん、おかしいやんか。」
「何が?!お前なんで、わらわんのや?」
「こんなん、迷信やんか!
いつまでも、こんなあほらしいことできんわい。
なんで、笑って食うたら、また来年も食えるんか。
そんなこと、ありえんわい。
科学的に言うても、おかしいわい。」
「、、、、、。」
「こんなん、やめようや。
もっと、科学的にいこうや、科学的に!
笑って食っても、人間やから、明日は交通事故で死んどるかもしれんで。
来年食えるとは限らんやんか。
なっ!おかあちゃん、やめようや。
こりゃ、あほくさいし、はずかしいわい。
家の前を通りかかった人が聞いたら、変な目で見るにきまっとるで。
やめや、やめや。
だいたい、今でもこんなこと続けとる家があるもんか。
僕はやめるで、おかあちゃんが続けたかったら一人ですりゃあいいよ。」
母は言いました。
「お前、学校行って、何、勉強しとるんや?!
お前みたいな人間を『小利口(こりこう)のバカ者』と言うんや。」
母は哀れむような目を僕に向けて続けました。
(その2につづきます。)
今回、豪雨の被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。
どうぞ、がんばってください。
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