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【1】「引っ込むくい」                    -2001/07/06-
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「出るくいは打たれる。」・・。

日本の集団と個人の特性を表す言葉として、よく語られる言葉です。

たしかに、現状を変えようとしたり、また、少し突出しようとすると、
その芽を摘んでしまおうとする動きはあるように感じます。

僕が、子どもの頃もそんな傾向はありました。
僕自身は、突出するような性格ではなく、平々凡々と学生生活を送っ
てきました。だから、自身に関しては、打たれたこともありません。
けれども・・・。

「あいつ、自分ばっかり目立とうとしやがって・・。」

クラスメート同士での、そんな陰口を何度も耳にしたことがあります。

でも、どうなんでしょうか・・。
僕には、もっと気づきにくかった問題があると思えるのです。

実は、僕らが今こそ考えなければならないことは・・。
「引っ込むくいも打たれる」ってことではないでしょうか。

「引きこもり」「とじこもり」に始まり「不登校」、ひいては
「暗い性格」「ねくら」「没個性」まで・・・。

僕らが、日常的に使っている言葉の中にさえも、ある種の悪意のにおい
が、ありはしないでしょうか。
もちろん、多くの場合は無意識のうちにです。

また、意識的にも、それらを直そう、改めさせよう、そんな行為に出る
ことはないでしょうか?

僕にはあるのです。
例えば「自分の考えを堂々と主張できる子になってほしい。」・・
そんな願いを教員時代から持ってきていました。
人前で、もじもじしてしまい、ものが言えない子を、なんとかしてあげ
たい・・。
そんな考えでいました。

今、考えれば、僕は傲慢だった気がします。
情熱という免罪符をふりかざし、向上心という教義を絶対と考える勘違
い教員だった気もします。

ある行為を「出るくい」と捉えることと、反対の行為を「引っ込むくい」
と捉えることとは、たぶん同意語なのでしょう。

くいには、それぞれの長さがあり、その長さが、ちょうどいい・・。

僕は41年間生きてきて、当たり前のことに、少しずつ気がついてきた気
がします。

(了)


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