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■「本業」-2000/10/16
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先日、秋子さんという女性からメールをもらいました。
そのメールには「お久しぶり」の意味合いでこういう一文があったのです。

「本業が忙しかったので、、、、。」

僕らも、そんな言葉をよく耳にし、口にしますよね。
普通なら、なんの注目もしない、すらっと通り過ぎていく、
そんな定型句でもありそうです。

でも、このメールの一文は僕を立ち止まらせたのですね。
なぜ、僕は、この文に目をとどめたのか、、実は・・。
彼女から、このメールの数日前に届いていた別のメールにその原因があるのです。

彼女は新聞社にお勤めしています。
彼女の仕事がら、僕は彼女の書いた文章を読む機会に恵まれるのですが、
その文章たるや、まさに「はつらつ」なのです。
「仕事が大好き」って感じで、生き生きとお勤めしています。

その彼女からもらった1通目のメール、立ち止まりの原因となったメールには、
こう書かれていたのです。

「夏休み・・・・母業に加えて
 実家に帰れば、娘業
 お義母様のご機嫌伺いに行けば、嫁業
 何役もこなしているうちに
 夏休みが終わった・・・・・という感じです」

これに会社勤めという「職業」が加わりますから、
「職業・母業・娘業・嫁業」という、少なくとも4つの「業」が
彼女にはあるということになります。

考えれば僕らも同じようなものですよね。
いろんな場面でいろんな「業」の自分を使い分けて生きています。
でも、その「業」の中で「本業」を意識したことが、僕にはなかったのです。

さて、彼女は何をもって「本業」と言ったのか・・。
彼女はこう書いてありました。

「私の本業・・・・・。
 母親業。
 それでもって、現在PTA役員さんしております。」

話は変わりますが、今年の異動で、学生時代からの友人が「転勤」になりました。
彼はある電機メーカーに勤めています。
その転勤は「九州から東京へ」というものでした。

彼は3児の父です。
そして、九州に自宅を購入したばかりの時期だったのです。

子どもの学校生活のこと、友達のこと、つれあいの生活のこと・・。
そして、経済面からみた生活全体のこと・・。
いろんなことを考え、彼は「単身赴任」を選びました。
彼にとって家族と別れて暮らすということはものすごい苦痛でした。
それは、「生活を守るため」の苦渋の選択であったわけです。
彼は、子どもに手紙を書き、電話をかけ、愛情を精一杯伝えていると言います。

日本の経済的発展に大企業がその大きな役割を果たしてきたことは事実です。

企業が「法人」と呼ばれ、ある種の人格を想定されたものであるとするならば・・。
企業は大きな権力を持った「巨人=ガリバー」です。
そして、僕らは、まるで「こびと」のように一息で吹き飛ばされていくのです。

しかし、おとぎ話のガリバーがそうであったように、
もし、企業に僕らの人格を認める暖かさがあれば、うまくつきあえると思うのです。

相手の人格を認めるということ・・。
それは相手の「本職」を理解することだとも思いました。
そうすれば、相手に対して、困難を伴うような「単身赴任」を強いることはできな
いでしょう。

リストラと言って、首を切るような今の企業にその暖かさを求めるのは難しいかも
しれません。
単身赴任は、ある人にとっては「惨劇とも言える悲劇」でもあります。
それををなくすことに知恵をしぼる意志が今の企業には欠如しているのかもしれま
せん。

しかし、次の世代の企業をひっぱっていく経営者は、間違いなく僕らの子ども達な
のです。
そして、その企業を支える人間も僕らの子ども達です。

僕らは子ども達に相手の人格を認めることの大切さを体験として伝えなければ
なりません。
そして、先生方にもぜひそうしてほしいのです。

そう伝えるのが僕らの「本業」のひとつだと思います。

(了)
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■秋子さん、ありがとうございました。
■単身赴任中の僕の友達「しげちゃん」と昨日、電話で話しました。
 とても元気でした。



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