「だから、どうしたの?」

 僕の友達にとてもマンガ好きな人間がいます。
ただ漫画を読むことが好きなだけじゃなくて、いろんなことを調べるんですね。
つい先日も「おいおい知ってるか、鉄腕アトム。」と電話がかかってきました。

「もちろん知ってるさ。」と僕。
「あのマンガ、国際的なんやぞ。アメリカでも放送されたんぞ。」
「ああ、その話、なんとなく聞いたことあるなあ。」
「けどな、アメリカではタイトルが『アストロボーイ』に変更されたんよな。」
「へー。」
「なんでかわかる?」
「いや、わからんなあ。」
「『アトム』って俗語で『おなら』の意味らしいんよな。『鉄腕おなら』じゃあ、しまらんよな。」
「へー、よく知ってるなぁ。」
「へー、へーってまさしくおならやな。」
(注:この『アトム・おなら』情報が本当かウソか僕には責任が持てません。)

 彼は、マンガだけに限らず、いろんな情報・データーを集めてるんです。
それが趣味みたいな人間なんです。
で、その情報・データーが実際に役立つかと言えば、これが実生活では全然役立たないのです。
まあ、話のネタにはなってくれるのですが、「だから、どうしたの?」って質問には答えられないんです。
彼も、もちろん承知で、そんな情報ばかり集めて喜んでいるんです。

 これが個人の趣味の世界なら、楽しいな、ですみますよね。
いろんな情報集めて、楽しみましょう。
「だから、どうしたの?」というセリフは入る必要はありません。

 けれど公的機関が、情報を集める場合はそうはいきません。

 文部省がやってくれました。
OECDが来年度行う学力調査の国際試験に日本の高校1年生を6000人ほど受験させるというのです。
高校1年と言えば入試が終わったばかり、その子ども達に今度は国際試験です。

 外国と比べて日本の高校生は学力が高い、とか学力不足だ、というような情報がほしいんでしょうか。
今年の日本は世界第28位だった来年は世界第10位をめざそう、とでもいいたいんでしょうか。
日本の先生は指導力不足だ、外国を見習え、とでもいいたいんでしょうか。

 そんなことするんなら、先に国際文部省官僚選手権でも開催すればいい。
教育長や教育委員も特別参加で出場です。
そして、勝手に文部官僚世界1位を目指せばいい。
かなりイイ線いけると思うんです。
今年は「公私混同部門」で第3位、来年こそ優勝するぞ。
毎年「傲慢行政部門」ではダントツだもんね。
サッカーくじのおかげで「利権発生部門」もいただきだ。
こんな感じでしょう。

 先生、保護者、そして高校1年生のみなさん、級友と比べられ、他校と比べられ、今度は外国ですか。
学力調査の結果が世界第1位でも30位でも私たちの生活に何の関わりもないのです。
学校生活にそんな情報が必要ですか?
興味を持っているのは「他者と比べることでしか存在価値を見いだせない」症候群、文部省の役人です。

学力調査の結果に対して言いましょう。

「へー、そうなの。だから、どうしたの?」



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