「うちの子、塾に通い始めて、3ヶ月だけどぐーんと成績があがったの。」
あるお母さんが、授業参観をしながら別のお母さんに話していました。
「いっそのこと学校の先生と入れ替わってくれたらいいのに。」
「そうよね。学校だったらタダだしね。」
ハンディキャップマッチってご存じですか。
例えば将棋だったら、飛車や角をはずして対戦する。
囲碁やオセロだったら、あらかじめ何個か石をおいておく。
ゴルフだったら最初から何打か割り引いてもらう。
つまり、スタート地点から条件をかえて、対戦する勝負のことですね。
ハンディをもらった方は有利なスタートを切るわけです。
逆にハンディを与える方は大変不利な状況でスタートするわけです。
学校の先生も塾の先生も同じように授業をします。
そして、どちらも子どもに学力をつけさせることを1つの目標にしています。
だから保護者から見れば同じ土俵で勝負しているように見えるのですね。
もし、同じ土俵だったとしたら大きなハンディキャップマッチです。
あいさつのしかた、トイレのスリッパのそろえ方、うがい、手洗い、などの日常活動。
そして、悩み相談、健康維持、非行対策、給食指導、そうじ指導、学級会活動、運動会などの行事。
学校の先生は教科の指導以外に大きな時間と労力を費やすのです。
それを考えずに塾の先生と比べられてはハンディの大きさゆえにたまりません。
総合職としての学校教員を教科指導という1面だけから塾の先生と比較するのは無理がありますよね。
そして、そもそも教科の指導にしても土俵が違うんです。
塾の先生は教科指導が至上命題です。
けれども、学校の教員は教科指導を通して人間性を養おうとしているんです。
だから同じスケートでもスピードスケートとフィギアスケートが違うように、目指すものが違うんです。
極論すれば教科の得点を上げさせるという技術においては、学校は塾にかなわないんじゃないでしょうか。
実は、そこにも学校教員の悩みの1つがあるのです。
入試などを考えると「塾に行かなくても大丈夫ですよ。」と言えない状況が出てくるのです。
僕たち保護者も総合職ですよね。
料理をつくり、そうじをし、伝統を教え、一緒に悩み、健康を考え、学習にもかかわる。
たとえば、料理だけ取りあげれば、レストランのコックさんにはかなわないわけです。
そうじだって、プロのおそうじマスターさんにはかないっこありません。
比べられては、困ってしまいます。
僕ら保護者は料理を通じて、子ども達に愛情をも伝えようとしているわけです。
そうじを通じて家庭の一員としての役割を教えていくのです。
だから、学校の教員の苦労を本当に理解できるのは保護者でしょう。
同じように、保護者の悩みは学校の先生が一番理解できるはずです。
本来ならば学校の先生と保護者は1番の仲間になるはずです。
もうすぐ3学期も終わります。
この1年間、僕たち保護者はどれだけ学校の先生と話せたでしょうか。
先生達はどれだけ僕たちの考えを聞こうとしてくれたでしょうか。
定期的に話し合える場をつくれば、もっと理解し合えるはずです。
そんな場を作らなければ、先生達は大変に苦しい境地に立たされかねません。
いや、既に立たされているような気もします。
理解が深まれば、「先生入れ替え論」なんて出てこなくなると信じています。