━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】「ゆずり葉」-2001/04/04-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
僕は、南極にペンギンがいることを知っています。
実際に現地で見たことはないのだけれど、知っています。

ガラパゴス島のぞうがめのことだって、知っています。
世界で一番高い山はエベレストだってことも知ってます。

それは、間違いなく、テレビやラジオ・新聞・雑誌のお陰です。
もちろん、それを支える飛行機・車などの移動手段のお陰でもあります。
情報は、僕にいろんな興味や関心を与えてくれました。

・・・「おじいちゃん、そんなことも知らないのん?」
花見をしていた僕に、女の子の言葉が聞こえてきました。。
もちろん、どんな場面でそんな会話になったのかは、わかりません。

何気ない女の子の言葉。
よく見る風景の一つのような気がします。
そう言えば僕だって、じいちゃんに、そんなセリフを言ってました。

ああ・・と思いました。
もし、情報機器がなかったら・・・。
きっと、僕は、南極どころか、今見ている山の先の世界も知らなかったこ
とでしょう。

そして、きっと、祖父母にこう聞くのです。
「じいちゃん、この山のむこうには何があるの?」
「ばあちゃん、この山のむこうには、何が住んでいるの?」
「おそろしい世界なの?楽しい世界なの?」

そして、きっと、祖父母は、そのまた祖父母から聞いたような話を僕という
孫に伝えてくれたはずです。

「この山の先にも、どうやら、わしらと同じ人間がすんでいるらしい。
 海の先には青い目をした人間もすんでいるらしいぞ。」

僕は言います。
「じいちゃんもばあちゃんすごいや。物知りやなあ。
 僕もいつか行ってみたいなあ。」
そこには、きっと大きな憧れと尊敬があったと思うのです。

生きてきた年輪が、そのまま次世代へのゆずり葉となりうる土壌があった・・
そんな気がするのです。

高齢化社会を迎えます。
それ自体は非常に幸せなことだと思います。
しかし、同時に、人類が未だ体験したことのないような情報化社会もきました。

その情報化社会は、孫が祖父母に物を教える時代を作りつつあります。
老人を介護という観点、守るべき人たちという目でみることが優先されるべき
かのような雰囲気を作り出しました。
それは、教育現場にも大きく影響しています。

今こそ、本気で、高齢化と情報化の関係を考えるべきだと思います。
子ども達に高度の情報が必要なのかどうかも含めて・・。

それにしても、僕はどんな老人になるんだろう・・、
いや、なりたいのかなあ・・。
孫ができたとしたら、その時の僕に「ゆずり葉」はあるのかなあ・・?

(了)



ご意見ご批判は今すぐメールで送って下さい。
たくさんのご意見が「教育の複眼」を作ってくれると思います。
あなたのご意見はメールマガジンやHP・その他の媒体にてご紹介させていただく場合がございます。
全て匿名(またはペンネーム)で掲載させてもらいます。
【例】:すもも(32才)主婦
もし、掲載しては困る場合がありましたら、「掲載不可」と明記下さい。
それ以外は掲載合意とさせていただきます。

ホームへ       語句別索引へcounter