僕が日教組の組合員だった頃の出来事です。
大分県の大在埠頭(おおざいふとう)という港にアメリカの戦艦が寄港することになったのです。
日教組で最強と言われる大分県教組としては黙って見過ごせないのです。
さっそく組合員に指示が来ました。
「大在に集結し反対運動をせよ。平和を守るために団結しよう。」
「集結し」と言われても全員がいけるはずがありません。
実際には各学校から2名とかの具体的人数が指示されるんです。
僕のいた学校では組合員で参加する順番を作っていました。
それで、僕の番だったんです。
港に行って見ると既に戦艦は入っていました。
そして、現地での組合側の責任者が熱弁を振るうのです。
「我々は米軍を断固阻止する。まずはジグザグ行進で抵抗の意志表示をする。」
そして僕たちは肩を組まされジグザグ行進です。
けれど、機動隊や警察が来ているわけでもなく、別に普通に歩いても歩けるんです。
なんか、妙だなあって思いながらもスクラム組んでジグザグ行進は15分続きました。
どこへ行く宛もない行進です。ぐるぐる同じ所を回るんです。
僕は少し情けなくなっていました。
そして今度は戦艦に向かって声をそろえて大合唱です。
「べいぐーんはかえれーっ!!(米軍は帰れ)」
「べいぐーんはでていけーっ!!(米軍は出て行け)」
「べいぐーん、ごーほーむ!!(米軍Go home)」
もちろん相手には何と言っているかわからないはずです。
「ごーほーむ」だって通じてないんじゃないでしょうか、、。
何回も何回も繰り返しました。
すると戦艦の乗組員、数名がデッキに顔をだしたのです。
こちらの大合唱はさらに加速します。
「べいぐーん、ごーほーむ!!」
すると乗組員が白いシーツを2枚出したのです。
こちらから拍手がわき起こりました。
「米軍が白旗だー!!ギブアップしたぞー!!」と誰かが叫びました。
「よーし、闘争勝利だー!!」
僕は「そんなはず、ないよなぁ。」って思いました。
でも、参加者の多くは熱くなっていて、さらに大合唱を続けようとしています。
責任者は叫びました。
「よーし!ジグザグだー!!」
その時です、戦艦の乗組員達がシーツをひっくり返したんです。
シーツの裏にはアルファベットでメッセージが大きく書かれていました。
僕たちはそのメッセージを背中に見ながらジグザグ行進をしました。
僕は、情けなかったです。
自分の意志を持たず、集会に参加し、言われるままに「米軍は帰れ」と叫ぶ。
平和運動と言いながら、何のことはない、兵士のように自分の意志とは関係ないところで動いている。
今の自分は何なんだ。
行く宛もないジグザグ行進、それがまさに自分を表しているようでした。
きっと戦艦の乗組員達も同じでしょう。米国という国家の意思で動かされている。
そして、はるか太平洋の彼方、日本まで行かされてしまう。
たどり着いた先では歓迎どころか反対運動。
一人の人間として、悲しかったはずですよね。
しかし、2枚のシーツに彼らは「Japanese Go Home」とは書かなかった。
「We Love Japan」彼らのメッセージはこれでした。
「帰れ!!」と叫ぶ日教組の平和運動に違和感を感じるのは僕だけでしょうか。
僕は日教組の存在意義を認めます。
しかし、現在の運動をそのまま認めるわけにはいきません。