僕らが、「学校依存症」から抜け出せないキーワードの
一つに「友だち」があると思います。
「学校には勉強をすることと同じくらい、いや、それ以
上に大切なことがある。
いろんな人とふれ合い、仲間を作ること。これも大きな
学校の役割だ。」
多くの方がこのような言葉を聞いたことがあると思いま
す。
僕も、教員になりたての頃は、そう信じていました。
子ども達に、いろんな出会いをさせてあげたい。
たくさんの仲間ができればいいな。
僕にとって、それは疑う余地のない真理であり、その思
いを実践することが教員としての1つの使命だと思って
いました。・・・ある時まで・・・。
それは、ある「教員研修会」に参加した時のことでした。
ご存じない方のために書きますが、教員にはたくさんの
研修の機会があります。
勤務校はもちろん、他校の先生と一緒に教科の研究や学
級作りの研究など行うんです。
新米教員にとっては、「眼からうろこ」のとてもありが
たい機会となる場合もあります。
中には「なんでこんな研修させられるんだろう。」って
のもありますが・・。
話がそれてしまいましたが、その研修会で、一人の小学
校の先生(仮に吉田先生とします)が実践報告をしたの
です。
吉田先生は学級の「仲間作り」をテーマにレポートを提
示してくれました。
ある男の子(仮に純くんとします。)にスポットをあて
た報告でした。
純くんは5年生。
進級したてのころのアンケートにこう答えていました。
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Q「あなたのお友達の名前を教えて下さい。(3人まで)」
A「僕の友だちは本です。」
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吉田先生は、純くんのこの答えが気になりました。
そして、中休みや昼休みに純くんの様子を観察し始めた
のです。
アンケートの答えは本当でした。
純くんは、いつもひとりぼっちです。
学級文庫や図書室の本を黙々と読んでいます。
クラスメートは誰一人純くんに声をかけようともしませ
ん。
吉田先生は4月の家庭訪問で純くんのお母さんと面談し
ました。
お母さんも純くんに友だちがいないことを心配していま
す。
先生はこれではいけないと思い、いろいろな手だてを講
じていきます。
グループ学習を多く採り入れ、純くんと他の児童との接
触の機会をふやします。
学級のみんなで遊ぶ日を作り、先生も一緒に遊びます。
純くんが一人で教室にいるときは、他の児童にそれとな
く声かけをするように促します。
そのような学校生活の中、純くんは次第に級友との関わ
りを持つようになっていきます。
2学期の中頃になると純くんは明るい笑顔を見せるよう
になってきたのです。
このような実践報告を聞き、僕は何かしっくりこないも
のを感じたのです。
吉田先生の熱心な指導、純くんの笑顔・・。
そのすばらしさの中に感じた、何かしらの疑問。
その疑問を僕は考えました。
(つづく)