「99.97%の安全消失(2)」  その1

 登下校中の安全確保はどうあるべきでしょうか?
ここでいう安全は誘拐や変質者などが引き起こす犯罪事件に対するものに限定しています。
交通事故などに対する安全は、また別の次元の話だと思うからです。

僕は小学校の教員でしたし、現在は小学校のPTA会員ですから小学校を例にして述べてみます。

 僕の子どもが通う小学校では地域の子どもが5から8人ほど集まっての集団登校をしています。
「登校班」という名前がつけられており、高学年が班長となり引率しているわけです。
集合場所は基本的に自宅の近くの公園や広場です。
保護者が集合場所まで引率している姿もよく見かけます。
また、暇な時はそのまま登校班に付き添って学校まで行く保護者もいます。
これは、安全面で言えば、現在の所、かなり効果があるようです。

犯罪者の立場からしても、集団登校は抑止力があるはずですよね。
たくさんの子どもの目があり、保護者も時折とはいえ顔を見せるのであれば犯罪は発生しにくいです。
ただし、集団登校には子ども相互の人間関係の問題が常に内在しています。
子どもサイドからの自発的な集団ではありませんから無理もありません。

しかし、この「登校班」は子どもや保護者に登校中の安全意識を認識させる効果もあります。
学校や地域で実践する1例になると思います。

 次に下校についてです。
下校時刻にばらつきが多いですから、集団下校は難しいですね。
ただし、少なくとも同学年では下校時刻の違いを極力なくす努力を教員がすべきです。
1組は下校が早く2組は遅い、なんてことをなくすべきですよね。
これは、各教員が考え、できなければ校長が徹底して指導すべきです。
やろうと思えば簡単にできるんですから。

そうすれば、より多くの子どもが同じ頃に下校し、抑止力が高まるわけです。
しかし、大人の目がありませんよね。
登校中のような出勤時の大人の目、登校班での保護者の目などが極めて少ないのです。

 実は僕の家族は毎日、子どもを学校まで迎えに行っているんです。
同じように毎日迎えにきている同学年の保護者が2名います。
時折、迎えに来る保護者も増えてきたそうです。

そんな中、ある保護者が教頭からこう言われたそうなのです。
「毎日、迎えに来たりして、子どもを甘やかしてはいけないよ。」
それを聞いた妻が憤慨したように僕に教えてくれたのです。
もし事実だとすれば、その程度の幼稚な認識しかできない教頭もいるのです。

 しかし、実際に毎日迎えに行くということは不可能な家庭がほとんどですよね。
だからといって学校や行政が無策ではあまりにも無責任です。
いえ、だからこそ、対策を考える義務があります。

 まず、校長が保護者に対して「下校時に迎えに来ること」を奨励するという手があります。
1学年が70人程度の学年であれば1学期に一回だけでも保護者が迎えに来ればいいのです。
また、保護者が望めば、迎えに来た日に授業参観ができるようにするといいです。
通常の授業参観はイベント的な面があり本来の授業を見ているわけではありませんから、いい機会です。
そうすれば、1年間、毎日どこかの保護者が迎えに来ていることのなります。

そして、そのような安全確保をしていることを校長がいろんな方法で宣言するんです。
校舎の壁に横断幕をかけるのもいいですよね。
「登下校にも保護者の目が行き届く安全宣言!!○○小学校」なんて書けば犯罪者は躊躇するでしょう。
家庭の協力で塀にポスターを貼ることもできます。

 そして教員が下校時に地域に出かけて指導を実施するとさらに効果的です。
月に一度でも行われたとすれば、かなり抑止力は高まります。

 また火災などの避難訓練のように犯罪からの避難訓練を行うことも必要です。
犯罪者は巧みです。
警察の姿をして近寄ってくるかも知れません。
大人でも警察手帳を見せられれば偽物であっても信用してしまうかも知れません。
子どもなら、なおさらでしょう。
いろんなパターンを想定し避難訓練すべきだと思うんです。

 僕はこの程度の対策しか考えつきません。
しかし、みんなで考えればもっと効果的な対策ができるはずです。
そして、保護者や教員の危険に対する認識が高まれば「安全」は高まるはずです。
安全確保は「教育」や「しつけ」以前の最も大切な大人の義務なのです。

(了)



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