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■「不惑のはじめまして(1)」-2000/08/11-
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僕は川の近くに住んでいます。
僕も子ども達も毎日のようにその川を見て生活しているわけです。

かなり、汚れているのですが、それでも、カモやかわせみ・よしきりなども見ること
ができるような川です。
海に近いため、はぜ なども顔を見せてくれます。
そういう意味では、いわゆる都会の川より恵まれていると思っています。

僕と妻はふと思い立ち、子ども達にこの川の上流を見せることにしました。

そうめんとカセットコンロ、ざるを持って出発したのです。

車で45分程度。
そこには、30秒も手をつけていれば耐えられなくなるほど冷たい流れがありました。

「用意ドン!!」
子ども達と僕はそれでも流れに手をつけました。
「うわあ、こりゃたまらん。」
僕が水から手を抜くと、子ども達も手を抜きました。

するとです、、。
すると手に、何やらゴミのようなものがいくつかついているのです。
そうですねえ、大きさは2ミリ程度でしょうか、、。
子どもの手にもついていたんです。
よく見るとピチピチ動いているのです。
さらによく見ると、足や触覚があり生き物だとわかりました。

「あっ!これ知ってる!本で見たことあるで!」
子どもが大きな声で言いました。
「たぶんカワゲラの幼虫や!」

カワゲラの幼虫、、僕はその時初めて見たのです。
いいえ、もしかするとこれまでにも見たことがあったのかもしれません。
そして、見逃していたのかもしれません。
その日、初めて意識的に見ることができたのです。
しばし、少し興奮気味に見入っていました。
すると、今度は、、。

「お父ちゃん、お母ちゃん、こっちに来て来て、ナナフシや!!」
「えっ、今度はナナフシかい!」
「そうや、ナナフシや。」

小枝に擬態したバッタの仲間「ナナフシ」。
これまた、僕にとっては生まれて初めてのご対面となったのです。
彼はじっと、、まさに小枝そのもののように静寂を保っていました。

僕は40才、「不惑の年」を迎えています。
よく考えれば、ここ何年間も僕にとっての新発見はなかったように感じるのです。
そして、そんな「はじめまして」は、もうないのじゃないかと何年も前からあきら
めていたような気がするのです。
それは、視力や行動力ではなく「感性」が衰えていた証明なのでしょう。
いろんなものに対する興味関心のうすれ、、。

もしかすると、僕は今後、今まで以上に「はじめまして」を体験できるかもしれま
せん。
要はその「はじめまして」を見過ごしてしまうか、味わえるのか、という「感覚」
の問題なのでしょうね。

切れるように冷たい川の水にさらした「そうめん」をすすりながら、
僕は少しの反省と少しの希望とを感じました。

翌日から、僕も家族も普通の生活に戻るわけです。
奥深い森の中の源流付近、、。
非日常という窓口で体験した「不惑のはじめまして」は、日常生活を変えていく
ヒントを与えてくれた気がします。
それは、行政や社会が用意してくれた、いわゆる「生涯学習」とは少し距離のあ
るものだと思うんです。

そんなことを考えながら、僕は一人の女性のことを思い出していました。

その2につづきます)
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■関連コラム項目「親子の対話・関係
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