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「みせかけの身長」その1-1999/11/30-
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 大相撲の舞の海関が引退しました。
ご存じでない方のために少し紹介します。
非常に小柄な体格なのです。
しかし、その小さな体を生かし、たくさんの技を駆使し大活躍した人気力士です。

 その舞の海関が大相撲に入門するときのエピソードがあるのです。
彼は小柄なため身長が規定に達しないのです。
つまり、そのままでは力士になれないのです。
 それで、なんと頭にシリコンを注入する手術を受け、「みせかけの身長」を伸ばしたのだそうです。
当時の写真があるのですが、素人が見てもすぐにそうとわかるほど頭が飛び出していました。
もちろん力士になってからはシリコンを抜いたそうです。
だって実際の相撲には何の役にも立ちませんから。
 この時、もし舞の海関がそこまでしなかったら、あの人気力士は誕生しなかったのです。
また、多くの才能ある若者が「身長規定」のためにあきらめたことも想像に難くないです。
シリコン手術などの技術がない時代は、当然入門は無理ですよね。
 だから、この規定は相撲界にとって大きな損失を生み出していた可能性が大です。
(今は改正されてきているとのことです。)

 素人考えですが、こんな身長基準はいらなかったんじゃないでしょうか。
少なくとも「みせかけの身長」など測る必要はないですよね。
実際、土俵の上で相撲をさせてみればいい。
親方というプロの目で見れば、足腰の強さ、粘り、柔軟さなどの素質をすぐに見抜けると思うのです。
 何故そうしなかったのか不思議です。
身長や体重という数値で表れることを基準にして判定することは簡単です。
これは、相撲をまったく知らない人でも審査官になれます。
 けれど、素質はそうはいきませんよね。

 教員の世界にも採用試験という物があります。
公立の小中高の教員は都道府県単位で採用試験を受けます。
(それぞれの教育委員会が試験を実施します。)
では、この試験は教員としての資質を見抜いてくれるのでしょうか?
答えは絶対に「いいえ」です。

 まず第一に採用を審査する教育委員会に責任感がなさすぎます。
なぜなら自分たちで合格の判定を出していながら、後から「先生は世間知らずだ。」と言うんですよ。
(誤解しないで下さいね、僕は世間知らずでいいと思っているんです。)
自分が採用した教員なのに「先生の指導力不足が荒廃の原因だ。」と豪語するんです。
じゃあ、選んだあなた達の責任はどうなんですか、と言いたいんです。
採用責任という感覚はあるんですか、ということです。
 あなた達こそ「世間知らずかどうか見抜けないような世間知らず」ではないですか。
教員の批判をする前に自己批判が必要だと思うんです。
「教育の荒廃の責任は教員を選んだ自分たちにある。」と言った教育委員会がありますか?

 それでも合格した人間はいいです。まだ救いがあります。
でも、あなた達に落とされた人間はたまらない。
その中にはすごい資質を持った人間がいたかも知れないのです。

 教育委員会は僕たち保護者に胸を張って言ってほしいのです。
「自分たちは責任を持って教員を選んだぞ。」
「自分たちの選ぶシステムには自信があるぞ。」と。

  けれど今の教員採用試験は「みせかけの身長」を測ることに一生懸命なのです。
測らなくていいことを測っている。数値に換算できることのみに頼っている、そんな試験なんです。
逆に言えば「みせかけの身長」を伸ばすテクニックを知らなければ合格しないのです。
だから、受験者はそのテクニックにばかり目がいってしまう、僕はそうでした。
これは、お相撲さんで言えば「シリコンばっかり打って、腕立て伏せなんて全然しない」力士ですよね。
これまた誤解しないでほしいのですが、僕は合格した教員がだめだと言っているのでは全くありません。
実際にシリコンで受かった舞の海関はすばらしい力士でした。
シリコンを打たせる採用試験がだめだ、と言っているんです。

 次回は採用試験の内容について発信します。
保護者の方にもぜひ知っておいてほしいのです。
そして運悪く採用試験に落ちた人間への理解を深めてほしいのです。
もしかすると、その人は臨時講師としてあなたの子どもの学級担任になるかもしれないのです。
その2



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