先日、保護者と教師の地区懇談会がありました。
参加者は地区担当の先生が数名、そしてその地区に住んでいる保護者です。
日教組(大分県教組)が主催する会で、僕の地区では年間に3回、公民館などを借りて行われています。
話題は地区での危険個所の知らせあい、児童の様子、教育行政など多岐にわたっています。
学級担任が出席していませんから、保護者も楽に意見が述べられるらしいんですね。
僕は保護者として初めての参加でした。
そこで、こんな話が出たんです。
それは、あるお母さんの言葉でした。
「近頃の先生は、子どもにゲンコツの1つもできないんですか。」
先生は少し困ったような顔をして答えました。
「いやあ、お母さん、私たち教師は法律で体罰を禁止されているんですよ。」
別のお母さん達が発言しました。
「でも先生、愛のムチというじゃないですか。」
「そうそう、心がこもっていれば、少しくらいの体罰はイイと思いますよ。」
「お前のためだ、って気持ちがあれば、子どもも納得するんじゃないですか。」
「私たちが子どもの頃、人気のあった先生もよく叩いてたわ。」
「ようは、気持ちよね、気持ち。」
参加した保護者は、少しは叩いてくれた方が子どものためになるという考えのようです。
僕が教員だった頃も同じような保護者にたくさん出会いました。
「先生、うちの子はビシビシ叩いてもらって結構です。厳しく指導して下さい。」
こんな言葉を何度も聞きました。
あの頃も今も似たようなものなんだなあ、なんて思いました。
僕の経験から言うと叩く先生もたくさんいましたし、また全然叩かない先生もいました。
教員時代の僕の体罰に関する考えは決まっていました。
しかし、教師を辞めてからの僕は、父親としての現在の僕は体罰に関してどう思っているんだろうか。
自問自答しながら、お母さん達の意見を聞いていました。
今日は保護者として先輩にあたるお母さん達の意見をよく聞いておこう、そう決めました。
そして不謹慎ですが、聞いていて何だかおもしろくなってきたなあって感じもしたんです。
親と教員が教育について語るのは、とてもいいもんだなあ、なんて思っていました。
しかし、そんなおもしろそうだなあって雰囲気が消え去る場面がすぐにきました。
あるお母さんがこう言ったんです。
「だから、失礼かも知れないけれど、近頃の先生は『サラリーマン先生』って言われるんですよ。」
そのお母さんは続けました。
「たとえ、クビになったってかまわん、子どものために叩くんやって先生はいないんですか。」
目の前にいる先生を直接批判しているわけではありません。
しかし、先生は顔を少し紅潮させて意見を述べ始めたんです。
「実際に子どもを叩いて処分されてしまった仲間の教員がいるんですよ。
真剣にがんばってた教員ですよ。
その子の親は教員になんて言ってたと思います?
今の皆さんと同じように『どうぞ遠慮なく叩いてくれ』と言ってたらしいんですよ。」
会場はシーンとなってしまいました。
(その2に続きます。)