3学期になった。教室に入ってきた先生を見て驚き、嬉しかった。D教員
は結婚して教員を辞めたのだった。そして、新しい担任はKH先生だった。
初めて男の先生が担任となった。
KH先生の自宅は、私の家から2キロ南西にあった。KH先生は自転車で
通勤していた。始業式の日、HRが終わった時に、KH先生は「kyouji、ち
ょっと待っていろ」と言った。いじめっ子たちは、みんな帰ってしまい、私
は一人で教室にいた。
しばらくすると、KH先生が校庭から「kyouji、帰るぞ」と大きな声で私
を呼んだ。自転車に乗せてくれるのかなと私は思ったが、先生は何も言わな
いで自転車をこぎ出した。私は走った。クラスでも3番目に小さな私には、
KH先生に追いつくのが大変だった。
KH先生は、いろいろな話をしてくれた。私の家族や、今までの学校生
活のことも聞かれた。蛇の出る田舎道まで2km、KH先生はゆっくりと
自転車を進めたけれど、私はついて行くのは厳しかった。
これが毎日続いたのだった。いじめっ子たちは、「よそ者は、KH先生
にヒイキされている。いじめると先生に叱られる」と思ったらしく、いじ
めはピタリとなくなった。
授業中に勉強できるなんて、初めてだった。どの教科の勉強も楽しかっ
た。分からない事は、帰りにKH先生が説明してくれた。冬は寒かったが、
私は温かかった。毎日2km走っていたのだった。
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◆ 私は教員になって5年目に、KH先生宅におじゃました。教員
として、少しでも自信がつくまで、KH先生には会わないと決め
ていたからだった。KH先生は、「kyoujiは体がきゃしゃだから、
鍛えたんだよ」と言った。体が弱かった私はよく熱を出して学校
を休んだ。しかし、KH先生に出会ってから、学校を休む事が無
くなった。風邪で医者にかかったのは、30代なってからだった。
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私は絵を描くのが苦手だ。絵を見るのは大好きなのだが、絵は全く描け
ない。しかし、後で知ったことだが、KH先生の専門は「美術」だった。
ある日の「図画工作」の時間、KH先生は言った。「これから、“7に
んのこびと”の本を読むから、君たちが感じたことを絵に描いてくれ」。
クラスには、抜群に絵がうまいT君がいた。私はいつもT君が羨ましかっ
た。
私が描いたのは、白雪姫が寝ていて、7人のこびとが心配そうに彼女の
周りを取り囲んでいる場面だった。そして・・・・
「kyouji、お前の絵だが、郡の展覧会に出すから、もう少し丁寧に描き
直してくれ」と、KH先生に言われた。すごくうれしかった・・・が、困
ってしまった。私のクレヨンは8色しかなかった。クラスのみんなは、12
色、24色を使っていた。私はどうしても24色のクレヨンが欲しくなった。
その夜、私は父の財布からお金を盗んだ。
(その2につづきます。)
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編集人ひとこと
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うーん、オリンピックの開会式を見ましたが、、、。
ありゃあ、行き過ぎじゃないかなあ、、。
企画そのものにドーピング検査が必要かも、、。
学校行事(イベント)をテーマに書いたことがあります。
もし、お暇でしたら下記ご覧下さい。
「マラソン大会での僕の思いこみ」
http://www.yukichi.ne.jp/~deko/colums/event.htm